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奴隷の国  作者: 猫人鳥
1章

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13/1455

13 上辺

 今の私は、アキナ様に買ってもらった服を着て、アキナ様に買ってもらった帽子を被っている。

 どこからどう見ても人類種だ。

 紅茶を買うためのお金をアキナ様のリュックから適当に取り出し、ポケットにしまって宿屋から出た。


 とはいえ、人類種の国で買い物なんてした事はない。

 紅茶はどこに売っているものなんだろう?

 初めての街並みにどこへ行けばいいか分からず、きょろきょろと辺りを気にしながら歩いていたら、


「お嬢さん、何かお探しですか?」


と、男の人に声をかけられた。

 初対面だし、頼るのもどうかと悩んでいたら、その後ろから、


「おい、お前。抜け駆けはずるいぞ。やぁ、君。困っているなら僕が解決するよ」

「な、なんだお前等は。この女性にはおらが先に目をつけてたんだぞ。やぁ、おらと遊ばないかい?」

「この娘は俺の婚約者にするんだ! お前等離れろ! 結婚してください! 一目惚れしましたー!」


と、どんどん男達が溢れてきた。


 この男達が全員、困ってる私を助けるつもりなんてないのは分かってる。

 いや、助ける気はあるのかも知れないけど、それは純粋な親切心からではない。

 私を普通の人類種の若い娘だと思って、自分達の欲望を満たす為に声をかけてきてるんだ。

 なんなら欲望剥き出しみたいな男もいた。


 風呂に入り、多少綺麗になったとはいえ、私は私だ。

 さっきまでは魔神種だの、汚い奴隷だのと奇異の目で見ていた癖に、奴隷印や角がないだけで人の態度とはこんなにも急変するものなんだと、改めて思い知った。


「あの、私はこの街に来たばかりでして……紅茶を売っているお店を探しているんです。ご存知ありませんか?」


 だけど、紅茶を売ってる店が分からずに困っていたのも事実。

 こういう連中は嫌いだけど、アキナ様にちゃんとした紅茶を届ける為には頼った方がいい。


「あぁ、それなら美味しい紅茶の喫茶店がありますよ。ご案内致します」

「ありがとうございます」


 最初に話しかけてきた男について歩いていく。


「あ、あの、こっちの方がいい紅茶が……」

「一緒に遊んだ方が……」

「結婚……」


 ついてきそうな他の男達には、


「こちらの方に案内していただくので、大丈夫です」


と、一応断りをいれておく。

 女が1人でいるから声をかけられるのであって、男と共に歩いていれば他の男達は声をかけては来ない。

 紅茶を買うまでの間は、この男と一緒にいた方がいいかもしれない……嫌だけど。


「それにしても僕達は運命の出会いですよね。まさかあなたのような美しい方と出会えるとは。そして、あなたは僕を選んで下さった……」

「私は紅茶が欲しいだけです」

「あなたのお名前を伺っても?」

「名乗る必要性を感じません」

「いやいや、全く。お茶目な方ですね」


 美味しい紅茶があるという喫茶店へ向かっている間、男はずっと話しかけてきた。

 全部適当に返したけど、本当に面倒だった。


「ここのお店ですよ」

「案内ありがとうございました」

「いえいえ、ではお嬢さん。共に優雅なティータイムを」

「いえ、結構です」


 私は変に絡んでくる男を振りほどき、喫茶店へ入った。

 強く振り払ったからか、男は店内にまではついて来なかった。


「すみません。紅茶を持ち帰りたいのですが」

「いや、申し訳ないけど、うちは持ち帰りはやってないよ。紅茶は時間が経つと味が落ちるからね」

「そうなんですか……」


 喫茶店の店員さんに声をかけると、持ち帰りは出来ないと断られてしまった。

 折角紅茶を売っている店に来られたのに……

 また別の店を探さないといけないな。


「お姉さん、何か困り事かい? とりあえずうちの紅茶、飲んでみておくれよ。落ち着くと思うから」


 喫茶店の店員さんは私に一杯の紅茶を淹れてくれた。

 この人はさっきの男達のような上辺だけの人助けとは違い、私の事を本当に心配してくれている感じがする。


「あ、ありがとうございます」


 魔神種の国には紅茶という文化は無かったし、人類種の家で私が紅茶をもらうことなんて無かったので、紅茶を飲むのは初めてだ。

 でもアキナ様に買っていくはずだったのに、私が飲んでいる場合じゃ……


「もしかして、紅茶は苦手かい?」

「いえ、飲んだ事がなくて……」

「それなら、是非飲んでみてくれよ」

「いただきます」


 アキナ様はきっと私が先に紅茶を飲んでいたとか、そういう事を怒る方ではないはずだ。

 それに折角いただいたんだから……


「あ、美味しい……」


 飲んでみると、本当にとても美味しかった。

 香りも良い上に体も温まって、落ち着ける感じだ。


「お姉さん、この味を気に入ってくれたのかい?」

「はい。とても美味しいです」

「ちょっとは落ち着いたみたいだね。さっきまでひどい顔色だったよ」

「そうですか? ありがとうございます」


 こんな全然知らない人類種の国で1人で買い物なんて、正直不安でいっぱいだった。

 アキナ様の為だと頑張っていたけど、私は気を張りすぎていたのかも知れないな。

 

読んでいただきありがとうございます(*^^*)

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