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奴隷の国  作者: 猫人鳥
9章
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ミララ視点です。

アキナ様が開催した、誰が一番強いのかな祭り。

その準決勝第1試合は、フィール対フェルルという試合になった。

私にとっては本当に凄くどうでもいい試合ではあるけど、私はこの試合の解説役とアキナ様に決められてしまったので、見るしかない……


「準決勝第1試合がはっじまっるよ〜」

「一番興味のない試合なので、適当に始めて終わって下さい」

「という事で、フィー? フェルルー? 準備はいーい?」

「私は構いませんよ」

「俺も……」


フェルルが試合場に持ち込んできたのは、ユートとの試合でも使っていた蔓植物だ。

ちゃんと祈りを使ってみないと正確な事は分からないけど、見たところ炎への耐性がかなり高めてあるみたいだ。

まぁ、フィールの本気の≪フレイム≫なんて当たったら、結局は灰になってしまうんだろうけど。


対してフィールは、いつもとなんら変わりのない格好をしている。

強いて言えば腰の辺りにいつもは付けていない小さな本のようなものがあるので、おそらくはマジックキャンセラーが使われる事が確定しているからこそ、術式を丁寧に纏めてきているんだろう。

でもそれ以外に違いが殆どないというのは、フィールが普段から常に戦えるように警戒しているという事で……


「じゃー、試合開始っ!」


シャラララーン!


「うわっ、うるさっ!」

「あのマジックキャンセラー、音も鳴る仕様の奴だったのね! これはますます高額ね!」

「何でそんないらない仕様になってるんですか?」

「人類種の貴族達って基本的に、財力自慢しかしないからねー。自分の家とか装飾とかにばっかりお金をかけるのよ」


試合が始まると、フェルルは開幕でマジックキャンセラーを発動した。

馬鹿丸出しで自分が発動したものに驚いている。

フィールも驚いていたみたいだったから何も攻撃されなかったけど、今の隙であの槍をさされたら即終わっていた。

やっぱり目先の事しか考えられないんだ……どうでもいいけど。


シュッ!


「あら、いきなりね!」

「もう試合は始まってるんだからなっ!」


バシュッ!


「えっ!」


少し苦い顔でマジックキャンセラーを見ていたフィールを、フェルルは持ち込んだ蔓植物で襲った。

でもフィールは、よそ見をしていたとはいえ試合には集中していたようで、しっかりと蔓植物を飛んで避け、その空中にいる状態から術式を発動して≪フレイム≫を放ってきた。

それも特大の、威力の凄そうなものを……


あれでは流石にあの植物も燃え尽きるだろうと思ったけど、私の予想よりも炎耐性が高かったのか、フィールの≪フレイム≫が見た目より威力の弱いものだったのは分からないけど、意外にも蔓植物は燃え尽きる事なくフィールを襲い始めた。

とはいえフィールは、後ろにも目がついているみたいに蔓植物の攻撃を避けているから、全然攻撃は出来ていない。


「フェルルの蔓植物は、あれだけの威力でも燃えなかったわね!」

「……炎耐性をかなり高めてあるみたいですからね」

「祈りで耐性を高めるのには、かなりの魔力を消費するでしょう?」

「1週間前からこの祭りに向けての準備をしていたんでしょうし、それくらいはできますよ……ん?」

「どうかした?」

「あ、いえ……」


なんだろう?

今何か、あの植物に違和感があった気がしたんだけど……?


「ふふふっ」

「楽しそうですね」

「そーねー」


横に座るアキナ様は楽しそうに笑っている。

実況と解説という中立の役職となっている私達は、試合中の2人の状況に対して何かを思ったとしても、それを発言する事は出来ない。

それが戦略だった場合、片方への手助けとなってしまうから。

これだけ笑っているんだし、アキナ様にはあの植物の変な違和感の原因も分かっているんだろう。


ブワッ! バチバチッ! バーンッ!


「はぁっ!」


ドゴーンッ! 


「あらあら、フェルルに≪サンダー≫が直撃ね」

「でもあれ……」

「そうね。フェルルには全く効いていないみたい」


蔓植物を槍で薙ぎ払いながら術式による魔法を浴びせていたフィールは、蔓植物が斬られてから再生するまでの僅かな隙をついて、フェルルへと≪サンダー≫を放った。

フェルルは祈りで植物を操る事に集中していて完全に無防備だったので、直撃したはずだった。

でもフェルルの魔石の魔力は全く減っていないみたいで……植物の盾のようなものに守られているんだと分かった。

しかもあれ……


「アキナ様、あれ……ありなんですか?」

「ん? もちろん!」

「でも、ああいうのをありにしちゃったら……」

「書くのが物凄く大変な高等魔法の術式を先に書いて来ていたり、亜空間に先に発動してあった魔法を転移させているのと一緒よ。準備万端というだけで、何も問題ないわ」

「……そうですか」


解説席からマイクで質問してしまうと、全体に聞こえてしまうので、アキナ様にだけ聞こえるように耳元でそっと聞くと、アキナ様も同様にマイクで声が響かないようにしてから答えてくれた。

それも本当に楽しそうで……


いくら初開催で正式なルールが決まっていないとはいえ、これを認めてしまっていたら、このお祭りはかなり無茶苦茶になってしまうだろうに、いいんだろうか?

こんな、あらかじめ≪インビジブル≫をかけて見えなくしてある植物を持ち込むなんて事を認めて……

 

読んでいただきありがとうございます(*^^*)

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