第Ⅵ幕
私は巻山信彦(27)。今帰ってきたところだが、目の前に奴がいる。
「久しぶりだな、信彦。」
「パパ?」
こいつは巻山慎之助。私の父である。
「何しにきた?もう私たちは関わらないんじゃなかったのか?」
「おいおい、もうワルモノ扱いか。わざわざこっちは忙しい中会いに来てやったっていうのになぁお前らもそう思うだろ?悠斗?元?」
「は?」
「え?」
めっちゃ困ってんじゃねえか。このジジイめ
「わかってないねえ。俺は君たちとお友達になりたいんだよ。仲良しな。」
「茶化すのはもういい。早く本題を話せ。」
「本題って、お前実は薄々気づいてんじゃねえのか?」
いちいち腹が立つ喋り方だな。
「別にここで話さなくてもいいだろ。場所を移すぞ。」
「あいよ。あ、悠斗。この店いいぞ〜、100点だ。しかも10点中な。」
店を出た。
久々に親子二人っきりだ。もっとも、望んでなんかいなかったが。
「なあ信彦。お前復帰するつもりはないのか?」
「あるわけないだろ。」
「そうか…パパ悲しいぞォ。3年前までお前はまさしく若者といった感じで輝いてたのにな。あ、だから若気の至りであんなことしちまったんだな。今の言葉傷ついたか?ならごめんな。」
「私はあなたのそういう無神経なところが嫌いだ。それにわたしは輝いてなんかいなかった。」
「そんな怖い顔すんなよ。あと謙遜もな。パパはお前のこと大好きなんだぞ。だからお前を引き戻しにきた。あんな喫茶店とっととやめちまって、早くお仕事に復帰しようぜ。」
「いやだ。あなたには理解できないだろうが。」
「そうか。あとお前、あいつら昔お前が救急隊員だったの知ってんのか?」
「知らない。わたしだって忘れたい。」
「分かった分かった。じゃあパパもう帰るぞ。最近は忙しいんだからな。じゃあな〜」
まったく。気分が悪い。帰るか。
「ただいま。」
「おかえり。まっきーさっきの人誰?」
「私の父だ。」
「巻山さんすごいじゃないですか。元救急隊員なんて。見直しましたよ。」
「元?それ誰から聞いた?」
嫌な予感がする。
「誰って巻山さんのお父さんに決まってるじゃないですか。」
あの野郎、余計なことしかしないな。
「まっきーのパパって偉い人なの?」
「ああ。あんな感じだが、東京圏内の消防司令長だ。」
「あ、そうだ。明日は祝日だし、遊びにでも行こうか。」
「どこに?」
「劇場とかどうかな?」
いいじゃないか。映画。わっしょいわっしょい。
第Ⅵ幕 父と私