第③幕
私は巻山信彦(27)。つい先日音楽家への扉を叩いたばかりのミュージシャンだ。何事も思い立ったら吉日という。となれば、仲間集めだろう。
というわけで路上ライブの聖地井の頭公園に来た。やってるやってる。片っ端からこえをかけていく。
まずはギタリスト。いいねえ。
「一緒にグループ組まないか?」
「もう間に合ってるっス」
素っ気ない上にチャラい。お前絶対友達いないだろ。でも間に合ってるのか。世間ひろすぎだろ。
じゃあキーボード。
「グループ組まないか?」
「いいですねぇ。なんの楽器をお使いですか?」
「私はカスタネットだ。」
「あぁ、はあ。」
惜しかったなあ。うん。ギターとか言えばよかった。
「おこまりですかね?」
お?綺麗な七三分けにメガネ。さては私に惹かれたな?私を導いているのか?ならば連れて行ってもらおう。白馬の王子様❤️
「はい」
「かわいそうに(笑)僕なんてあっちこっちからよく声がかかりますよ(笑)この前なんて大手からオファーが来ましたし(笑)ポテンシャルですかね(笑)蹴りましたけど(笑)まあ、3歳からピアノを弾いていればこれくらい当然ですけどね(笑)」
いや濃い。「。」の代わりに(笑)を使うやつなんか初めて見たぞ。でもまあ実力者らしいし、名前でも聞いとくか。
「君、名前は?」
「オファーですかね(笑?)僕は霧山三郎と申します。あなたは?」
「私は巻山信彦だ。」
「よろしくお願いします(笑)」
「ああ。」
結局メンバーは集まらなかったが、ライバルは出来た。また今度頑張ろう。
喫茶店に帰る。
「今帰りましたー。」
「おかえりー」
お前は私の母か。
「まっきー頑張ってるねえ、調子はどう?」
「悪くはないですよ。」
まあ良いと言えないが。
なんか降ってこないかなあ
第③幕 ライバルと私