ドレス
三日後に養子先との顔合わせを控え、クリスが来てドレスの試着をした。
「正式なドレスも良いけど、平民って設定ならかしこまったドレスじゃなくても良いかも知れないわね」
「ですが伯爵夫人との対面を考えると伝統的なものの方が宜しいのでは?」
「それも一理あるけど夫人は本質を見る人よ、究極的に言ってしまえば清潔感のある常識的な格好であれば何も言わないと思うのよ」
「そうするとドレスでなくても?」
「良いとは思うわね、でも」
でも? とクリスを見るサリー
「なんでも良いから可愛らしく仕上げればそれで良いと思うの、という訳で忌憚のない意見をドシドシ言ってちょうだい!」
「はい!ワーナード様、私はコチラのドレスを着せたいです」
「私は・・・」
「やっぱりこっちが・・・」
クリスのひと言を皮切りにそこかしこから意見が飛び交った。
時間の空いた侍女とワーナード商会の人、サリーとクリス、タチアナと侯爵夫人が集まって、いつもの着替えが始まった。
ボクはみんなに任せるよ・・・
「コルセットはどうしましょうか?」
「年齢を考えると着けない方が良いわね、それにコルセットに頼らなくても十分シルエットが美しいわ」
「マロン様は体型の維持に何か為さっているのですか?」
「え、体型? 別に・・・」
「馬鹿みたいに肉食べる癖に、この体型維持してるの本当に憎らしいわね・・・」
サリー、クリスと話しているとレナが忌々しいと低い声で言った。
「羨ましいです」「本当に」「若さかしら」
「あの量を食べてこの体型だと基礎代謝が・・・」
「体型どころか肌も・・・」
なんかみんなの視線が怖いよ?
ボク何もしてないのに・・・
寧ろマロンは何もせずに体型維持をしているので、女性陣の目付きが嫉妬と羨望に染まっていた。
ドレスもワーナード商会取り扱いのもので
伝統的な落ち着いたドレス5着、若い人向けの華やかな新作ドレス5着
上等な普段着用ワンピース数着に、それぞれに合わせた下着と小物、アクセサリー。
それ等が全てワーナード伯爵自らの持ち出しなのだから、ひと言ふた言は言いたくもなる。
とは言ってもその感情は悪感情ではなく
お姫様のお世話をする様な感覚なので
マロンは実寸大の極上着せ替え人形と化して着せられ脱がされお触りされていた・・・