デート 6
「ね、アランこっちこっち!」
ボクがアランの腕を引いて歩いているとおかしな事に気づいた。
通りを埋め尽くす程の人通りなのにボクとアランは快適に進める、なんでだろ?
んー、と少し考えたけど、肉のとてもいい匂いが鼻に届いてどうでも良くなった。
昼時とあって賑わう通りにおいてマロンはとても目立っていた。
仕立ての良い白いワンピース、髪は短いが美少女と言える女の子がふわふわとスカートを揺らしながら歩けばイヤでも目を引いた。
手を引かれるアランも街歩きにとそれなりの格好だったが品の良さは隠せるものではなく、少なく見積もっても良い所の男女であるのは明白である。
そんな2人が平民街を歩いていれば自然と道はひらける
大半が平民である衆目の中には貴族に連なる人間も少なからず居た。
「へい、ラッシャイ!」
「おじさん、いい匂いだね」
「おうよ!ウチのから揚げとサイコロステーキは絶品だぜ!」
「サイコロステーキ?」
「サイコロってのは東国の、」
屋台の親父はふと顔を上げて客を確認して驚いた
どう見ても裕福な家庭の子供だと思われる少女が立っていたからである。
こんな露天の、しかも肉や鶏を好んで食べるとも思えなかった、しかし
「ジュル・・・、アラン財布頂戴!ボクこれ買うよ」
舌なめずりせんばかりに目を輝かせたマロン
「いや、俺が支払うから気にせずに」
「ダメ、ボクが買うの、アランさっきの服買ってくれたでしょ?」
「アレは必需品だし、それに今日はエスコートしてるから」
「いいから、お礼させて」
「おい兄ちゃん」
「はい?」
「確かにデートの時の支払いは男の甲斐性だぜ、だけどなあまり意固地になると彼女に愛想尽かされちまうぞ、甘える事も覚えねえと完璧な奴なんて疲れちまうからな」
「いや、これはデートでは」
「デートじゃないの? ボクはアランのこと好きだよ? 好きな人と一緒に出掛けることをデートって言うんじゃないの?」
「マロンそれは・・・・・・、う」
アランは周囲の目に気付いた
綺麗なワンピースが目を引くこともあり、周囲の目がアランとマロンを自然と追っていた。
露天の前で何やら揉めては更に注目を集める
女の子からデートじゃないの? と聞かれた此処で何が言えようか・・・
「・・・・・・・・・マロン、ご馳走してくれるか?」
折れた。
店主が言うことも一理ある
服に関しては自分のポケットマネーで支払った、女性の身の回り品という事でそれなりにいい価格ではあったが
王子の従者として戴いている給金はかなり良いし、アラン自身は散財する趣味も無いので貯まるばかり。
気を遣ってという訳でもなく、本当に大したことないと思っている。
それでも相手がどう思うか慮れば
女性に払わせるとはいえ、この程度で気を良くするなら構わないとも自分を納得させたのだった。




