デート 5
馬車の振動が収まる、どうやら商会に着いたみたい
「ほら、着いたみたいだから」
「ん、もう1回して」
マロンが甘えるようにアランの胸もとにすりつく
アランは苦笑しつつもギュウっと抱き締めた
「仕方ないな、ほら」
「えへへ、ありがとう、アラン大好き、あったかいね」
マロンが猫だったら、ゴロゴロと喉を鳴らしそうな幸せな様子であった。
よくよく考えればマロンに親は居ない為、親しい人に甘えたいと思うのはごく自然なことだ。
最愛のエリザベスが居ない以上は次に懐いているアランがその役割を為すのは当然の帰結である。
アランのエスコートで馬車を下りるとワーナード商会の前には店員さんが4人待っていた
「あ、サリー」
「マロン様、いらっしゃいませ」
「リボンありがとう、ほら」
レナと商会に来た時に貰ったリボンを今日は着けていた
タチアナが譲ってくれた白のワンピースにも似合うと、皆が勧めて結んでくれた。
サリーにも見えるようにくるりと回って見せた。
「お似合いです、本日の御用向きは?」
「えと、服が少なくて、下着とか靴下とか・・・」
サリーは目を細めて柔らかく笑った
「かしこまりました、それでは、」
ババーン!!!
「あらやだアランじゃない、いらっしゃい!ううん相変わらず良い男ね」
商会の立派な両扉が左右に勢い良く弾かれ
中から漆黒の紳士服に身を包んだ筋肉ムキムキの大きな男の人が現れた。
「あー・・・、居たか・・・、クリス」
アランは珍しく苦い顔で小さく呟くと顔を下に向けた
「あん、もう、そんな顔したら折角の美しい顔が勿体ないわよ、久しぶりねえ今日はどうし、たの・・・」
大きい男の人はアランと知り合いみたいでニッと笑うと、次いで手を握っているボクの方へ顔を向けた
男の人はカッ!と目を見開くと、
「いやあああっ!なにこの可愛い子」
「わ」
ゴウと風圧と一緒に凄いスピードで目の前に来て、脇に手を差し入れて持ち上げられた
ボクはあまりの早業に何も出来なかった。
「ヤダー!お肌もツルツル、声もワタシ好み、あーもう滾ってきたわよー!」
ボクはそのままクルクルと回された
高い高ーい?
「だからいやだったんだ・・・」
フー、とため息を吐くアラン
アレがクリス様か、とあっけに取られるキース
店員も固まっていたが、ハッとすると慌てて止める。
「わ、若様、お気持ちは分かりますが未だ自己紹介もなさっていませんよ」
「あらやだワタシったらゴメンなさいね、お姫様」
「大丈夫だよデス」
ちょっとビックリしたけど、大きな体に大きな手
持ち上げられたけどガッシリとして全然怖くなかった
ちょっと、すこし、変な人?
「ワタシを見てこの反応、肝も据わっているわね・・・
初めましてワタシはクリス・ワーナード伯爵、ワーナード商会の代表でワーナード伯爵家当主よ、ヨロシクね」
おっきい男の人、クリス伯爵?は白い歯を見せて笑い
バチーンとウインクした。