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観察しまして

エリーが婚約して一週間後、今日は第二王子が公爵邸に来るらしい

侍女の話によれば今後こちらから伺ったり、あちらが来たりと交流を重ね、成人後に期を見て婚姻を結ぶ。


ボクは勿論王子を測らせてもらうつもりだ

エリーに相応しいかどうか。


とは言え、初めてのお宅訪問でペット同席は常識を疑われる

「殿下がどのような方か分からないから」と、ボクは王子の前に出る事は出来ない。



そんなことで止まるボクじゃない

恵まれたオコジョの身体能力を存分に使わせてもらう

エリーの寝室、天蓋付きのベッドの天蓋を登って屋根裏に

屋根裏は設計上、そして防犯上、人が通れる程の空間は無いけどオコジョなボクには関係ない。

さささ、と目的の部屋まで忍び込む


屋根裏まで来てしまえばボクのオコジョイヤーが音を捉える






「、————ありがとうございます殿下」

「いや、ぼ、私の方こそこれから世話になるのだから足を運ぶのは当然だ、と思う」


「改めまして殿下、マスティーゼ公爵が娘エリザベスでございます、これからどうぞよろしく存じ上げます」


完璧な所作でカーテシーをしたエリザベス

ニコリと笑った彼女に王子は見蕩れた


「・・・」

「殿下?」

「あ、ああ、よろしく頼むエリザベス嬢」


コテンと首を傾げた愛らしい様子のエリザベスに再び見蕩れる王子は慌てて取り繕った。



公爵夫妻は王子の様子を見て内心ホッとしていた

政略、王家からの打診の婚約とは言え関係が良好であるのは望ましい事である

自分達も政略結婚だったが2人の時間を過ごす内に政略以上の感情を持つようになった

娘にも願わくば幸せな家庭を築いて欲しい

そんな想いがあった。


エリザベスの方には政略以上の感情は無さそうだが

王子の方の反応は初々しく好意があるようで上々だ


「エリザベス、中庭でお茶でもするといい、殿下を案内して差し上げなさい」

「はい、お父様、殿下こちらへ、」

「あ、と、その、私の事はレオンと」

「レオン、様?」

「うん」


立ち上がったレオンは耳を赤くしながらもエリザベスに手を差し出した

エリザベスも慣れない距離に困惑した様子であったが、おずおずと手を重ねて部屋を出て行った。




王子の従者も静かに付き従ってついて行こうとしたが

チラリと応接室の天井を見やり言った


「失礼、公爵様」

「何か」

「屋根裏に影の護衛などは、」

「いや、構造上人が潜めるようにはなっていないし、人も配していない」

「そう、ですか、失礼しました」

「いや」



気の所為か、小さく呟いた従者は自分の勘違いかと特に気にもせず王子達に着いて出た。




パタン・・・




「マロン、居るんだろう」


コトコト・・・

天板の一枚が揺すられて少しズレた


「キウ」


その隙間から埃まみれのオコジョが降りて出て来た

人は配していない、人では無いものは居た


「あらあら、マロンちゃんもエリーの事心配だったの?」

「キイッ」コクコク

「ふふ」

「マロン、あまり王子の周りを彷徨いてはいけない、問答無用で切り捨てられる可能性もある」


オコジョ、イタチの類いは肉食である

気性は荒く、自分より大きな相手にも立ち向かう程で

小型の動物としてはかなりの武闘派になるのだ。

王子の警護もそんな動物が近くに居たら対処せざるを得ない

エリザベスを悲しませる可能性がある行動はするな

そんな言外の意味を込めた言葉だった。



「・・・マロン」

「キ」

「エリザベスを陰から見守れるな?」

「あなた・・・」

「キイ」

「見つかるな、怪我をするな、無理をするな、報告を頼めるか」

「キッ」


公爵はエリザベスを愛している

婚約者で王子とは言え愛娘に男が近付いているのは何とも許容し難い思いもあった。


親バカである。


「セバス」

「はい、マロンさまこちらを」


公爵の合図で執事のセバスが懐から小さな金属のケースを出した

その中には干し肉、ひとかけらちぎるとマロンに差し出す

どうやら食べていいようだ。


こ、これは!

スモークされて鼻に抜ける良い香りにじわじわと何回噛んでも溢れてくる旨味、適度な歯応え(オコジョ比)


う ま す ぎ る !


ハッとして公爵を見るとニヤリと笑った

なるほど、賃金と言うわけだ

キョロキョロと周りを見回すとセバスが察して懐からハンカチを一枚。

文字が刺繍されたものだ


すこししおからい、ちっぷはいい

「良いだろう、改良する」


しはらいは

「都度、干し肉二枚でどうだ」


ごまい!

「そんなに貯め込んでどうするんだ、いくら保存が効くと言っても太るぞ、三枚だ」


よん!

「・・・ダメだ、身体に悪い三枚だ」


ちっ

「こいつっ、舌打ちしたぞ!?」




こうしてボクはパパさんから依頼を受けることになった。

ママさんは呆れていたけど、王子の素行チェックは必要だと思うの。



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