おつかい
レナの下で働き始めて数日、ボクとレナはおつかいで街へ買い物に出掛けていた。
自分のものは自分で買う
お屋敷に出入りする商人も沢山居るけど、使用人の私物をまとめて請け負う商人が居れば、侯爵家のみとの取り引きの商人も居る。
侍女数人の私物のおつかいを頼まれたので
店を知っているレナ、ボクは顔を憶えてもらう為に一緒に出掛けた。
殆ど外に出た事がないから何でも物珍しい
あっちの人だかりはなんだろう、あ!いい匂いする
顔を真っ白に塗った派手な格好の人が火を吹いた!
人も多いし、凄い!
「ちょっとキョロキョロしないでよ、田舎者みたいで恥ずかしいから」
「あ、ごめんレナ」
いつの間にかレナと離れてしまって怒られた
「・・・アンタ、何者なの」
侯爵夫人からマロンのことは詮索無用と禁じられている
しかし屋敷の外であることでレナは敵を深く知ろうとした。
「ボクは、ボクだよ」
「侯爵家に来る前は何処に居たの、何してたの?」
「前は・・・、ずっとお屋敷に居たよ」
「ずっと? この王都に?」
「うん」
野良オコジョの時も、拾われてからもずっとこの都市に居る。
「なんで侯爵家に来たの」
「もう、元の場所には居られなかったから・・・」
元々人の身体が出来上がるまで待っててという話だ
「どうして?」
「・・・取り返しがつかないんだ、誰も分かってくれなくて、でもアランが助けてくれて」
公爵の冷たい瞳が怖くて、でもアダムスをそのままにもしておけなくて無茶をしちゃった
「そ」
暫く無言で歩く2人
レナはマロンの身の上を聞き出そうとして後悔していた
聞かなきゃ良かった、コイツいつもバカみたいにニコニコしてるから苦労知らずだと思っていたのに
旦那様とウィリアム様は中立のようだけど、奥様とアラン様、タチアナ様、メイリース様は気にかけているようだし
でも最近の社交界で大きなお家騒動などは聞いたことがない、結局マロンのことは何もわからないじゃない!
普段朗らかなマロンは話しかけやすい
しかし真面目な顔をすると神謹製の造形もあって、神秘的な様子を醸し出していた。
黙っていれば本物のお姫様にも見える容姿で目に憂いを湛えていた事で、それを読み取ったレナは雰囲気に呑まれ、ひと欠片の同情心を抱いてしまった。
マロンは特に気にしていない
レナが話さなくなると今度は離れない様に気を付けながら再び街の様子に目を輝かせた。




