効かない
真っ暗な中、小麦粉の袋を持ったボクは上に戻るとやっぱり扉が閉まっていた。
「レナー?」
ボクが声を掛けると少し間が空いて返事が来た
「ごめーん、突然風が吹いて扉が閉まっちゃったの! 建付けが元々悪くて開かないから待っててー! すぐに誰か連れて来るから」
「え、建付け?」
ボクは持っていた小麦粉を肩に担ぎかえると、取っ手を握って力を込めた。
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「アハッ、馬鹿じゃないの? 小麦粉なんて重いもの私達が運ぶわけないじゃない」
地下へと降りて行ったタイミングを見計らって扉を閉めてやった。
こんなに簡単にいくなんて!
真っ暗な所で小麦粉なんて見付からないし、扉の所までも多分戻って来れないわ、ぷふっ。
クスクスと笑うレナの手には鍵があった・・・
「レナー」
「えっ!?」
あたしは驚いた、だってあんな真っ暗の場所から扉に辿り着くなんて簡単じゃない
でも扉の向こうからは確かに声がした
あたしは慌てて考えると、思い付いたことを言った。
「ごめーん、突然風が吹いて扉が閉まっちゃったの! 建付けが元々悪くて開かないから待っててー! すぐに誰か連れて来るから」
嘘も嘘、大嘘だ。
人を呼びに行った途中、他の仕事も頼まれたとかで1時間くらい放置してから迎えに来よう、暗闇から救ったあたしに感謝して【バキッ】
「バキッ?」
は?
あたしが扉を見ると、鍵を掛けたドアノブがゆっくりと回って扉が開き、
ガコン
閂に当たって止まった・・・
「・・・」
は、え、はあ?
あたし鍵掛けたよね、間違いなくガチャンっていったし
自分で回してガチガチって動かないのも確認したのに・・・
動揺するあたしに扉の隙間から声が届く
「わー、ホントだ建付け悪いね」
「え、ええ、そうなの、だから少し待っ」
「レナちょっと下がっててー、開けるから」
「・・・え?」
閂に当たっている扉が少し歪んだように見えた
メキメキメキ・・・
まさか建付け悪いって信じて、力づくで開けようとしてるの?
あ、は、アハハ!本当にあったま悪いのね、閂があるんだから開くわけ、
ピンッ・・・、ピンッ!チャリン・・・
「・・・・・・え、え?」
なんの音かと見れば、閂を抑えている鉄の金具
その金具を止めている太いボルトが抜けて、足下に転がった。
見る間に閂は扉に押されて反っていく
「ヒッ!」
反射的にレナが後ずさった瞬間
バキンと金具は飛び、閂が外れて転がった。
「うーん、本当に建付け悪いね、これ誰に言えば良いのかな」
中からはマロンが小麦粉を担いで普通に出て来た
「そ、そそそそうね、あた、あたしから報告しておくわ、多分鉄が錆びててダメだったのよ、うん、きっとそう!」
そうよ!腐食してて脆くなってたの!
鍵もあたしの勘違いで開いてたのだわ!
己を無理矢理納得させたレナは次なるいじわるを考えた。
いじわる②
暗い所に閉じ込める
怖くもなければ、閉じ込められもしなかった。