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看破

『アラン様、わたくし今回のお話が嬉しくて居ても立ってもおられず・・・』

『今回のお話?』


アランが母を見るとイヤらしい笑みを浮かべていた


「母上、どういう事ですか」

「さあ、どういう事でしょうね?」


シレッとした夫人にアランは何となく察し始めた


「まさか彼女が婚約者とか言いませんよね?」

「あら、ふふふ、そうねえ、それもアリね」

「母上、以前も言いましたがレオン様が、」

「結婚するまで自分は女性を近付けるつもりはないって言うんでしょう? 憶えてるわよ」



アランはモテる。

王子の側近、仕事の出来る紳士、顔も良く家柄も文句なし


そんなアランは茶会などの場に行くと様々な女難に見舞われていた。

お近付きになろうと顔を合わせる、腕を取って抱き着いて来る程度なら可愛いもので

使用人に()()()()お茶を零されて、着替えを用意しますと別室に通され、着替え終わるとその部屋で二人きりのお茶会になったり

突然抱きつかれた瞬間、()()()()令嬢の両親が通り掛かったりと苦労していた。


自分だけの問題で済めば良いのだが、王子の従者を担っている関係上そうもいかない。

だからこそ両親を説得して家に来る縁談は断ってもらっていたし、アプローチを遠ざけて来たのは母も知っている

なのに何故このタイミングで縁談なのか、アランは分からなかった。



『アラン様!』


マローネが動いた。


アランは「いつものパターンだ」と身を躱して、そっと肩を掴み止めようとした。

大半の令嬢は貴族教育の影響か、名前を呼んでから抱きつこうとするのだ

女性との余計な接触は誤解を招くので、その辺りのあしらい方は20歳にしてベテランの域に達していた

ドレスとヒールのある靴で、相手は女性、遅れは取らない、が・・・


ぎゅっ!


「っ!?」


アランは掴まった

懐に入られ、背中に手を回され抱擁されてしまったのだ

近年は確実に躱し続けていたアランは驚いた。

しかも、意外と力が強くて振り解けない!



不覚をとった理由はふたつ


ひとつ、ドレス姿にも関わらず踏み込みが素晴らしく、動きが予想を遥かに上回った。


ひとつ、令嬢の動きを手で制するつもりが難なくすり抜けられて懐に入られた。


『マローネ嬢、私は、』


動揺しつつも言いかけて気付くアラン

見下ろすこの角度からの頭頂部と身長やサイズ感、見覚えがある

ごくごく最近、いや、・・・・・・昨日。


「・・・・・・・・・・・・・・・何をやってるんだ、マロン」

『お母様、バレちゃった』


マロンは抱きついたまま言った

夫人、タチアナ、侍女達は口々に勝手なことを言う

「あらやだ、もうバレたの」

「お兄様ももう少し乗ってくれてもいいのに」

「流石アラン様、愛のなせるわざですわ」

「愛? え、やっぱりアラン様のいい人なの?」

「キースの話によれば迎えに行った時も抱擁を交わしていたそうよ」


誤解は更に深まりつつあった

アランはため息を吐いて、昨日からこんなのばかりだとゲンナリしていた。


「え! あれマロンなの!? 元々顔が良いのは分かってたけどマジかよ、女って本当に化けんな・・・」


クロードの素直な感想にアランも同意する

化けるのだ、女性は身も心も・・・






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