今後
客間でごはんだ!
朝食のメニューはパン、野菜のスープ、川魚のソテー、サラダに果物。
世間知らずなマロンも流石に肉は要求はしない
肉を食べたいとは思うものの、飢える事を知っている為、素直に食事に感謝した。
「よっこいせ」
クロスケが対面に座る
「奥様に一緒に居て色々とサポートしてやれって言われてるから」
と同じテーブルで食事を摂るみたいだ。
「いただきます」
わーい、ごはんごはん!
早速ボクは魚を食べようと口を近づけた
「マロン、ちょっと待て!」
「え?」
「ナイフとフォーク、使えな?」
「!!」
クロスケに指摘されて思い出した
そう言えばボクは人間になったんだったね
改めて自分の手を確認する。
いつもみたいに皿に顔を付けて食べようとしていたけど
オコジョの時みたいに短い手足に困る事もないし、ナイフとフォークも握れる。
「だよなー、十年以上も動物やってりゃそうなるわ」
俺も一発目につい猫の気分で顔を突っ込んですげぇ目で見られたわ、と
クロスケは先んじて経験した事を教えてくれた。
ボクはクロスケみたいに前世の記憶も無いし、言われなければ確実に顔をベショベショにしていたよ・・・
「使い方は分かるか?」
「うん大丈夫、ありがとう!」
「いや・・・、さ、食おうぜ」
初めてナイフとフォークを握る
不思議な感じ、ボクの手だ! ふふっ
ひと口の大きさに切って、音を立てずに口に運ぶ
うん!美味しい!
「・・・」もぐもぐ
「・・・」カチャカチャ
「・・・」もぐもぐ
「・・・」カチン、コトン・・・
「・・・」もぐもぐ
「なあ」
クロスケに話しかけられる
口の中のものをゆっくり噛んで全部飲み込む
ナイフとフォークを静かに置いて水を一口
ナプキンで口元を軽く拭って、と
「なに?」
「・・・」
クロスケはなんとも言えない、苦いものか美味しくないものを食べたような微妙な顔をしていた。
「?、クロスケ? 嫌いなものでもあった?」
「いや・・・、マロンさあ・・・」
「ん?」
「お前、マナー完璧過ぎねえ?」
「マナー?」
「ああ、なんつうの、アランとかタチアナみたいに手馴れてるっつーかさ」
「手で食べるのは初めてだよ?」
「だよな、昨日(人に)なったばっかだもんな」
「ん」
何を言いたいんだろ?
ボクが頭を傾げているとクロスケが続ける
「テーブルマナー、誰に教わったよ」
「先生、かな?」
「先生?」
「あ、でもエリー? ずっと見てたし、うん、エリーの真似かも」
家庭教師の講義でテーブルマナーをやっていたし、殆ど毎日エリーと一緒に食事してたから
ボクの中ではエリーの作法しか無いと思う
公爵と公爵夫人も見ていたけど、特にエリーが小さい頃はボクと二人で食べる事が多かったしね。
その事をクロスケに言うと
「マジか・・・、コイツ無自覚系天才か? いや、神様のチートか? いやいや作法チートとか訳わかんねえな、てことは見ただけで覚えているとか・・・、アホっぽい癖にスペック高くね?」
ブツブツ言っていたけど何を言っているかは聞き取れなかった。
ボクは温かいごはんを食べたいから食事を再開する
ん、美味しい!