相談
「公爵夫人を通してどうにか出来ませんか?」
「いや、クロとマロンに関しては一度棚上げしよう、公爵家の家令が手引きしていたとしたら公爵も余裕が無い」
アランは昨夜公爵に早馬で襲撃の件を報せたが、その時公爵から聞いたのは屋敷に侵入者があったということだけ
その後マロンを保護して聞いた話を総合する
家令の裏切りが事実であった場合、大問題である
家令とは家主の代行人
一部と言っても公爵の権力を振るう許可を得ている程に信頼されていた人物なのだ。
マロンが暴れたことで本人の立場を悪くしていたが
警備を圧倒していながらも、家令以外には怪我を負わせていない点は公爵にとっても疑問に思う所のはずだ。
エリザベスの部屋に侵入したのだから目的はエリザベス、しかし目標が居ないにも関わらず、即座に逃げることも無く一悶着を起こすのも不可解。
愛娘エリザベスの部屋であった出来事なのだから、あの公爵なら徹底的に調べる。
毒の解析、入手経路、侵入者は何故家令だけにあそこまで苛烈な態度だったのか、上着にあると言う白金貨が本当にあるかどうか
公爵家家令と言っても流石に白金貨数枚を報酬で渡してはいない
金貨なら兎も角、白金貨は一般に使用する貨幣でないのだから。
「マロンの事はどうしますか?」
オコジョは人になった
王家の古書に神がかった存在を示唆する記述がある
侯爵夫人とタチアナの目の前で黒猫クロが人になったのも確認している
「信じてくれるとは思う、だが本人に会いたいと言うに決まってる、しかし現時点で身元の怪しい者を城、ましてや王妃の宮に引き入れるのは難しいな」
王妃を説得、宮から出して城内でエリザベスとマロンを引き合せるにしても、今のマロンは身元不明の平民
王族襲撃で皆ピリピリしているので昨日の今日では少し難しい
となれば、エリザベスは外で会うとも言いかねないが
王妃が許さないだろうし、レオンも城外に出したくなかった。
何しろあれだけの人数を動員して襲撃
城からの応援さえも足止めする組織立った行動
捕らえた者から得た情報も未だまとまっていない
敵の全容も知れていない為、迂闊に外へは行けないのだ。
城の出入りも制限されている
更には王都の出入りも厳戒態勢になっていた
「・・・身元は、母がマロンの事を気に入って世話をしているので何とかなるかもしれません」
「侯爵夫人が?」
「ええ、」
「そうか・・・」
自分が外から連れて来た女性ということで要らぬ誤解を招いている気もするけど
帰ったらしっかり誤解を解かねば・・・
朝の一件は屋敷の女性陣が盛り上がってしまいアランの言葉が届かなかった
早々に諦めて城に来たアランだった




