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神獣

「この本だ、読んでみろ」


王家の所蔵品である一冊の古書

貸し出しは出来ないがレオン立ち会いの上で読むのは問題ない。

アランは本を開いた




——————神獣


人並みの知識を有し、革新を齎す存在

初代国王ネルスティアスが国を興した傍らには常に黒猫が居た

艶のある黒毛に黄金の瞳を持つ美しい猫である。


建国から数年後、新興の国の形をどうにか整え

国王に伴侶をと言う話が側近から挙がり始めたある日

王は一人の女性を自ら連れて来た

女性は漆黒の髪と黄金に勝るとも劣らない輝きを宿す瞳の美しい女性だった。


側近は女の身元を調べたが、生まれや育ち、女を知る人間さえも掴む事が出来なかった

そのような怪しい女を王の伴侶には出来ない、周囲は反対したが王は聞き入れなかった


「彼女でなければ辞める、王はお前がやれ」


とまで言われてしまうと何も言えなかった

新興の国は王の求心力に頼る部分が大きかった

今、王に居なくなられては国が瓦解するのは分かりきった事だ、側近は渋々折れた。




しかし女は優秀だった。

王をよく支え、当時問題だった食料問題を解決した

程なくして王の子を身篭る頃には、誰も反対する者は居なくなっていた。


そう言えば、と側近は思い出した

王の傍に居た黒猫はいつの日か見ていない

猫を可愛がっていた筈の王は何も言わない


偶然にも伴侶の女と黒猫の毛色、瞳の色は同じ色であるが・・・


ある日王に聞いた

あの黒猫はどうしたのか、と

すると王は妃を見やり、妃は心底楽しそうにクスクスと笑っていた。


「私の愛した猫は常に傍らに在る、国を興した時と何も変わらぬ」


王は妃に口付けを落とすと満足そうに笑った

上手くはぐらかされた気がする。





古書は国の興りから初代国王が没するまでの内容だった

側近の日記なのだろう、王や妃に対する愚痴も書かれていた。


「レオン様」

「見ての通りだ、恐らく初代王妃は()()()()()()()()、数代後の別の古書には明確に書かれていたよ、獣が人になったとな、その辺りからだな賢獣や神獣と呼称されるようになったのは、まあ王族内での限定された話だが」

「だから、ですか」


アランの報告はまともではない

獣が人になるなど有り得ないのだから


しかし王家では特異な存在として知られていた

だからアランの報告もレオンは疑うこと無く聞き入れたのだった。


「これを公爵様に説明すれば、」


マロンの事も一考してくれる筈だ、そうすれば公爵家に戻る事も容易に・・・


「いや、公爵は話を聞いてくれない」

「しかし、この本を見せれば・・・」

「睨まれて帰ってしまった、朝一番に公爵夫妻がベスに会いに来たのだけど、母上が公爵家も安全じゃないのではと、宮から出さないと言った事で八つ当たりされたよ」


昨夜、公爵邸に侵入者があったこと

家令が大怪我したこと

はてには愛娘エリザベスが危険にさらされたことで

公爵にとっては怒りの落とし所がレオンになってしまった

王家の馬車が襲われたのだから、お前のせいだ、と。


朝の段階でアランの持つ情報がレオンに伝わっていたなら、まだ説得のしようもあったが

まさか神獣の存在が現実のものとなって来るとは思いもよらない。

レオンもアランの話を聞くまでは冗談か何かの比喩だと思っていたのだ。


去り際に公爵夫人が


「何かあれば私の方へ、落ち着くまで少し時間が掛かりそうなので・・・」


と言っていたことがせめてもの救いだった。






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