女達の夜 1
「お医者様は?」
「念の為アラン様のお怪我を確認していただこうと客間に通しております」
「なら、マロンちゃんも診て貰いましょう、裸足で擦りむいているし、手も腫れてるわ、こんな可愛い子に傷痕なんて残したら勿体ないわ」
ついでに夫、侯爵にあげる健康診断書も作成して・・・
と、侍女も頷き追従する。
「お母様、服は・・・」
「そうねえ、こんな深夜じゃあ買いに行く訳にもいかないし・・・」
「奥様、タチアナ様、邸内の使用人に声を掛けた所、姪や妹に贈る未使用品があるようで」
服、下着、夜着、靴、リボン、髪飾り、それぞれを手にしたメイドらが続々と合流する。
「あら、じゃあ全て買い上げるから、まとめておいて頂戴」
「はい」
「それと・・・」
侯爵夫人とタチアナを先頭に、マロンを抱えたクロードが続く
(なんか俺の時と対応違くね?)
自分の時は後ろからイキナリ押さえ付けられて
侯爵に射殺さんばかりに睨まれ、地下牢に入れられ・・・
複雑な気持ちのクロード、余計なことを言うと大変なことになりそうだから黙っていようと誓った。
一応、黒猫クロという前例が有るからこそ動物から人になった事を素直に受け止められる侯爵家。
何事も先駆けの存在は苦労するのである
クロードは成人した姿で現れた事も厳しい目で見られる一因であった
マロンは12歳の少女で、しかも整った顔立ち
アランがわざわざ迎えに行ったという事も手伝って
侯爵家の女性陣は張り切っていた
(アランが女の子をウチに連れて来るなんて、うふふ)
(私、妹欲しかったんだよね)
(キャー!美少女美少女!ハァハァ・・・)
(アラン様の好い人なのかしら、好い人よね? 襲撃に遭って大変なのにあの格好のまま慌てて出掛けたくらいだし)
(髪の毛短いけどサラッサラ!睫毛も長いし、この子すんごい美人になるわ)
(お風呂のお世話は誰がする?)
(私よ!)
(私だって!)
(皆でお世話しましょう、ハアハア)
といった具合にギラギラとその眼差しはマロンをロックオンしていた。
平民か貴族かなど些末なこと
かわいいは正義なのである。