アランの長い一日 2
「んで、俺が呼ばれたってことは・・・」
「ああ、クロード、お前と同じだ」
馬車の中でアランとクロードは話し合う
「俺も探せって?」
「いや、父上達には話したが先程王家の馬車が襲われた、身元不明のクロードが出歩いては面倒だ」
「地図は?」
「助かる・・・」
「いーや、まあ俺が一番アイツの事知ってるしな、どれどれ・・・」
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クロードと相談の上でアランは貴族街のとある区画に来ていた。
襲撃された時、助けてくれたあの子供を探しにである
クロードの考えはこうだ
「俺の知ってるアイツならスグに公爵の屋敷からは離れない、ある程度離れた所から眺めて、踏ん切りがついたら何処かへ行くかどうか・・・、俺の所に来いって言ってたんだが、」
アランも概ね同感だった
付け加えるならば、エリザベスの部屋が見える位置に、だろう。
公爵家は高い外壁に囲われているので、見下ろせる位置関係を考えると
この辺りに居そうだ、そんな場所を何ヶ所か探し回った
真夜中で真っ暗だ、探しものをするには難しい
ランタンの明かりだけを頼りにアランは歩き回った
クロードは身元がまだ固まって居ないので、御者であるキースと馬車で待たせてある。
「居るんだろう? 」
ガサッ!
何度も暗闇に声を掛けて漸く見つけた、わかりやすい反応に笑いが漏れそうになる。
「行くところがないならウチに来るといい、公爵家の事も(恐らく)誤解なんだろう? 」
「・・・」
視線は感じるが姿は見えない
ランタンの光源もたかが知れている
声を張り上げることも無くアランは待つ
あれだけ身体能力が優れているのならば目も耳も良い筈だ、きっと聴こえている。
「・・・どうして」
暗闇から帰ってきた言葉
それは沢山の「どうして」が詰まっていた。
「友達が困っていたら助けるさ、そうだろマロン」
アランが優しく語り掛けた瞬間
ランタンが照らしていた真っ暗闇の先から栗色が飛び出して来た。
ドム!
(ぐっ)
何となくこうなる事を予期していたアランは腹に力を込めて踏ん張っていた、それでも勢いに押されて2、3歩たたらを踏んだ。
その衝撃でランタンも落としてしまうが、自分に抱きついてきたマロンを優先した。
ぐすぐすと肩を揺らして泣いているので
そっと抱きしめて栗色の髪を撫でる。