人として 2
神様の教えてくれた場所へと駆け付けるとそこは騎士と襲ってきたヤツらのせめぎあいの最中だった
幸いな事にエリーが乗った馬車は無事で、アランも血まみれだけど剣を持って元気に戦っていた。
ボクは馬車の屋根に飛び下りた
ッドン
「キャアッ」
「ベス大丈夫だ、俺が君を護る」
「お嬢様っ」
室内からエリーの声が聞こえる、レオンとエマリーの声も聞こえた
あ、ボクが屋根に降りたから音でビックリさせちゃったのか、ゴメンね?
くるりと周りを見渡すとアランと目が合う
「危ない!」
アランの後ろから襲うやつが見えた
「アランを、いじめるな!」
どう動いたのか自分でも分からない
剣を止めて、感じるままに体を動かし襲った奴の顎を思いきり殴った。
かたい顎を殴ったのに、感触は意外と柔らかかった
なんか知らないけど戦えそうだ、エリーはボクが守る!
アランを気にすることもなくマロンはあちらこちらの賊を薙ぎ倒す為に動き出した。
「うーわ、顎砕けてんぜコレ・・・」
アランと一緒に戦っていた御者騎士が賊を確認すると無残な状態だったようで「うへえー」と引いていた。
王族の馬車を襲った賊だ
どうせ死罪か流刑か鉱山奴隷になるのだから同情も容赦もないが
「痛そー、うひー」と言う騎士の言葉もまた頷ける程の一撃である。
「やあ!」
「ぐあっ」
「とう!」
「がはっ」
「えい!」
「!?!?っ!?」
混沌とした戦場は、マロンの登場で更なる混沌へと巻き込まれた。
騎士から見れば、賊の後ろに子供が突如現れて驚く
しかも裸足で賊の足首を蹴っ飛ばしたかと思えば、鈍い音を立てて賊が倒れ込むのだから意味が分からないだろう。
賊にとっては悪夢以外の何ものでもない
「えい」
なんて、かわいい声が聴こえたかと思ったら立てなくなっているのだから。
賊だって装備は整えてある、剣にハーフヘルム、胸当て、肩当て、肘当て、膝当てに、鉄板を仕込んだと思われるブーツ
普通に考えて裸足の子供の方が足を傷める筈なのだが、膝をついて動けなくなっているのは現実に賊の方だ。
「なんだか知らんが押せ押せ!」
誰かが言った事で皆我に返った
そうだ、数に押されていたが
足を潰された賊は放置して構わない、動けないのだから逃げる事も襲う事も出来ない
空いた人員はそのまま賊の多い方へと応援に入り、戦局は一気に騎士の有利へと傾いた。
ただ・・・
「やっ」
「ぐお」
裸足の子供に大の大人がひれ伏している絵面はとてもシュールで、騎士たちは見ないようにした。
「あれは精霊さまだ、精霊さま、うん・・・」
「味方、だよな? うん、俺たちにはローキックとんでこないし、うん・・・」
騎士が現実逃避で棚上げしているうちに子供ことマロンは賊を打ち倒していった。