友情と愛情
眠いなあ、とっても眠いよ
いっぱい寝てるのに全然眠気が晴れない
目を覚ますととっくにエリーは学校に行っていたり、夜になっていたりしている
ボクはどうなるんだろう?
クロ、助けて・・・
誰か・・・
神様、身体はまだ出来ないの?
クロの喪失と自分のこれから、悲しさも考えることも沢山あるのに眠気に邪魔をされて思考がまとまらない
エリザベスも心配で心配で屋敷に居る間の殆どはマロンの傍に付いていた
それこそ周囲の人間が学校を休んでもいいと勧める程に心を砕いていたが、決してエリザベスは休まなかった。
王太子の婚約者である隣国の姫が遂に輿入れすることとなったのだ、その為の歓迎パーティーが王城で開かれるので高位貴族は参加しなければならない。
マスティーゼ公爵家の公爵と夫人は勿論
エリザベスとレオン王子はホスト側の歳も立場も近い存在なので姫の話し相手として重要な役割を与えられている。
着付けを終えて、既にレオンも公爵邸のサロンで待っている
公爵夫妻は公爵家の馬車で、エリザベスとレオンは王家の馬車で王城へと向かう
二人きり禁止令は今でも有効なので
対面にエリザベス専属侍女エマリーとレオンの従者アランも共に向かう手筈となっている。
いざ王城へと出発するタイミングでエントランスにオコジョが現れた
「キウ・・・」
エリー・・・
「マロン!?」
「お嬢様、わたしが」
よろよろと足取りの怪しいマロン
慌てて駆け寄ろうとするエリザベスをエマリーが止めた
正装、ドレスに身を包んでいるのでしゃがんだり走ったりすると崩れてしまう
エマリーがそっとマロンを抱き上げてエリザベスの元へ歩み寄る。
「マロン、どうしたの?」
「きい、き、・・・・・・キゥ」
寝ぼけているような様子で発せられた鳴き声の意味が全く分からなかった
いつもならある程度分かる筈の意志が感じられない
まるで朦朧としている、そんな様子だった。
「すぐ帰って来るから、ね?」
エリザベスは優しくマロンの頭を撫でると
マロンも応えるように頭をエリザベスの手に擦り付けた
「うん、待ってる」
そんな言葉が伝わってきた。
「いってきます」
と返して公爵邸を出た時には既にエリザベスは淑女としての顔になっていた。
「ベス、大丈夫か?」
「問題ありませんレオ様、さあ行きましょう」
心配になったレオンが声を掛けてもそれが揺らぐ事はない
公爵家の名を背負っているのだから失敗は出来ないのだ。
レオンはそれ以上言わなかった
許されるのならオコジョの傍にずっと居たいと思っている彼女に、これ以上は侮辱となると知っていたから。
エマリーは邸に残る侍女にマロンを渡すとエリザベスに付いて馬車に乗った。
そして、忘れられない夜が始まる・・・