現場を見まして
「・・・ロン、マロン・・・」
ん、んん?
はっ!?
ビックリして飛び起きるとアランがボクの眉間をコリコリしていた、あ、あ、あ・・・
そうだ、肩に乗っていつの間にか寝ちゃったんだ
「起きたか、そろそろ昼になるから行くぞ」
行くって何処に?
「エリザベス様がどういった状況なのか確認するんだろう? 多分、いやほぼ確実に食堂に男爵令嬢は来るからな、いくぞ、ぬいぐるみのふりでもしてろ」
あ、はーい。
オコジョはアランの肩にぶら下がり、顎をのせてピタリと固まった
どこからどう見ても完璧なぬいぐるみである。
そう、成人男性の肩にのるオコジョという奇異な様子を除けば・・・
アランはモテた
公爵家に婿入りする身の王子で、いずれ王族から外れるとはいえ現王子の従者にして側近。
ローラン侯爵家次男、整った容姿、真面目な性格、そして婚約者は居ない二十歳の男盛り
そんな彼が肩にオコジョをのせて校内を歩けば・・・
「アラン様、お肩のぬいぐるみは」
なんて、オコジョを切っ掛けにして話しかけられるのは必定である。
「従姉妹への贈り物ですよ、失礼します殿下に呼ばれておりますので」
さらりと適当な事を言って流す
小さな従姉妹は確かに居るがそもそも何故それをアランの肩に乗せているのかおかしな話
伝家の宝刀「殿下に呼ばれております」で大抵は引き下がった
言い換えると「貴女の用事は王子より優先されるものですか?」と言っているようなものなので、有無は言わせない逃げ方である。
たまにオコジョを見て、生身の動物と気付きギョッとする令嬢も居るがスタスタと歩き去るアランをわざわざ引き止めるような者は居なかった。
食堂のとある座席に一先ず座る
王子達は勿論食堂内で食事を摂ることはない
侯爵以上の家の者はサロン、個室を与えられていて
そこで食事をするのだ。
人が多く、自然と道が出来た
レオン王子とエリザベス、友人でアランの妹タチアナも一緒に現れた
いつもの様にサロンへと入ろうとした、その時
ストロベリーブロンドの令嬢が駆け寄ったかと思うと何もない所でド派手に転んだ
「きゃあ」
ガチャーン
その手にはトレー、昼食があったので転んだ拍子に床にぶちまける
よろよろと転倒した令嬢が立ち上がるとエリザベスの方を向いて言った
「やめて下さい!私が何をしたって言うんですか!」
「「「「「?」」」」」
一部始終を見ていた一同、全員が困惑した
何を言っているのだろうか?
「あたしが王子のお気に入りだからって、こんな嫌がらせ・・・、食べ物は大事にしないと!」
何が起きているのか理解できなかった
ボクは取り敢えず件の男爵令嬢を「やばい人」と認定した。
ひとりで転んで、ひとりで食事を零して、何故か近くに居たエリーのせいにしようとする謎理論の宇宙人だ。
チラッとアランの顔を見上げると口元がヒクヒクして
「これは、また、新しいな・・・」
と呟いている。
さっきのアランの言い方で「昼休みに見られる」を考えると何度も似たような行動をしているみたいだ
それにしても今回のは新しい展開らしく困惑しているみたい、いつもは何やってるんだろう?
ちょっと興味がある、酔っ払った人を遠くから眺めてみたい、そんな気分だ。