最後の敵 2
「まあまあだな」
執務椅子に座った公爵は鼻に布を詰めて言った。
「あなたの言う、まあまあとは大の大人を放り投げる事ですか? 貴方もそれに準ずるお手本を見せたら?」
「エリザベスの護衛を決めるのは私だ」
公爵夫人の言葉もなんのその、やっぱり公爵は自分が認めない限りエリーの身の回りに人は置かないみたいだ。
公爵夫人はため息を吐いてボクを見るとコクリと頷いた、最終手段を使っていいみたい。
「な、なんだ、」
公爵が座る椅子に近付いてボクは耳元で囁く
「・・・」
「き、貴様、何故それをっ!? あの時部屋には私しか」
「ボクも居たよ」
オコジョのボクが。
「っ!?」
あれ?なんでそんなに驚いているんだろ
ボクの事は公爵夫人とエリーから聞いている筈だよね?
公爵夫人と目が合うと苦笑した
「言ったけど、この人信じなかったのよ、エリザベスには物語を描く才能もあるんだね、って言って・・・」
「ば、バカな、あんなの信じられるかっ、いや、その様子、ウチの情報を売る奴がまだ居るのだな!」
「え・・・」
「あなた・・・」
アダムスはボクがやっつけて、その後は前家令のダドリーさんがその立場に収まったって聞いていた。
その際、公爵家内の内定調査で他の裏切り者は居ないって結果が出た筈だ。
うーん、一応切り札もあるけど
「令嬢は外でドレスを脱いではいけません」
ってママに凄い怒られたから、オコジョにはなれない。
じゃあこっちだ、淑女は賢く強かに!
「公爵夫人」
「なあにマロンちゃん」
「あのね・・・」
「ん?」
公爵夫人にボクのとっておきを教える
「・・・執務室で、・・・左から・・・、3冊目の・・・・・・、くり抜、・・・裏帳、」
「まあ、本当に?」
「うん、あ、はい」
「ま、待て!貴様何を言った!」
「うふふ、公爵様はお黙りになって」
「っ!?」
公爵夫人がニコリと笑った、背筋がゾワゾワする
ママが怒った時と一緒だ。
公爵はビクっとなって口をパクパクさせる。
「他にはあるの?」
「あとは・・・、・・・で、1番上の引き出しが2重底に・・・」
「待てーっ! マローネ嬢良いだろう、君には負けたよ、ハッハッハっ!その情報私が買おう、情報ひとつにつき白金貨1枚、どうだ!」
「マロンちゃん、私が情報全て買うわ、そうね報酬は・・・、エリザベスの侍女見習いの座と、ヒョゴ領のマッサカ牛リブ1年分よ」
わーい、肉ー!
ボクは公爵夫人の手を取った。
公爵はガクリと膝をついて崩れ落ちた、ごめんね?
でも安心してね、公爵家の事は誰にも教えてないから。
「マロン貴様ー!裏切ったな!報酬は払ったのにぃぃぃ!」
公爵は公爵夫人に命令されたアンドレアス達に引き摺られて連れて行かれた。
契約は高い報酬で上書きしていいって教えられたからね、干し肉3枚分は働いたよ!
こうしてボクはエリーの侍女になる事が出来た、やったね。