陛下。
あれから1週間、ボクは漸く普通に生活出来るようになった。
疲れるってあんな感じなんだね!
早速、アランのお見舞いとかエリーに会いに行ったりとかしたかったけど、王様が帰って来てから不要不急の外出を禁ずるって王命が下された。
一緒に帰って来た騎士団と残っていた騎士で動ける人を総動員して王都内を掃除したってレオンの手紙には書いてあった。
あと、助けてくれてありがとうとも書いてあった
エリーの大切な人だからね、いつでも助けるよ!
出掛ける事が出来ないから家でゆっくり過ごしていると
王様から城へ来るようにとの手紙が届いた。
***
「顔を上げよ」
呼ばれた先、王様の執務室にボクはママとパパの3人で来ていた。
王様は王太子様に似た顔で、目の前の豪華な椅子に座ってボクをまっすぐ見ている。
「・・・」
「?」
「・・・」
「??」
「・・・」
「???」
「・・・」
「陛下いい加減にして下さい」
「すまぬ、どこからどう見ても普通の令嬢なのだが本当にこの娘がドラゴンを退治したのか?」
王様はボクをジーッと見つめていたけど、途中で宰相さんに窘められていた。
宰相さんはため息をついて王様に言う
「その前に御名前をどうぞ・・・」
「む、すまないなマローネ嬢、伯爵と夫人も楽にしてくれ、これは内内の私的な招待だ、畏まる必要は無い」
王様は隣国である帝国から帰って来て王妃様と王太子様から留守中の出来事を聞いてひっくり返ったらしい。
化け物? ドラゴン? 空想の話じゃないか
その存在さえ信じられないのに少女がドラゴンを倒した?
何を言ってるんだと半信半疑
それも城内で固定されているトカゲリオンを見て信じたそうだ、それでもこんなドラゴンを倒したのが12歳の少女とは俄に信じられない。
え、リュミエール伯爵家に養子に入った娘?
マスティーゼ公爵家とメイベル侯爵家のお墨付き?
留守の間に何があった!
と、当事者にはそれぞれ話を聞くことにしたのでボク達も呼ばれたらしい。
王様の横には王妃様、反対側には宰相さんと大きい人がジイとボクを見ている。
「百聞は一見にしかず、騎士団長」
「はっ!」
「マローネ嬢、申し訳ないが此方の騎士団長と腕相撲をしてもらいたいのだ」
「腕相撲?」
「そうだ、息子や残った騎士らに話を聞いてもどうにも、な、とは言え試す為に令嬢に剣を向けるのも気が引ける」
平和的に、かつ力を試すなら限られた人間しか居ない場所で腕相撲が1番良いだろうと王様は言った。
ボクはママとパパを見ると「仕方ないわね・・・」「そうだね、模擬戦と言われないだけ・・・」と頷いたので、腕相撲することになった。
「いいマロン、手加減するのよ、騎士団長様が怪我をしたら大変な事になるわ」
「うん」
「5秒くらいは何もしないで好きにさせなさいね、その後はゆっくり・・・、ゆーっくり力を込めて倒すのよ、机に叩きつけちゃダメよ」
「分かった、優しく倒すね」
「・・・」
本人の目の前で繰り広げられる会話
騎士団長は頬を盛大にひきつらせた
「では、始め!」
「ぬんっ!」
宰相さんの合図で腕相撲は始まった
団長さんは筋肉をもりもりっと隆起させて力を込めて来た
5秒は何もしない、と・・・
「? どうした、早くせぬか」
「陛下、見ての通りですよ、並の・・・、いえマローネ嬢の力はこういう事です」
「なにっ!? だが騎士団長だぞ?」
「関係ありません、腕が細かろうが華奢に見えていようが目の前のものが真実です」
「なんと・・・」
よし、5秒くらい経ったよね?
ゆっくり倒して、コツン、と。
「はあっ、はあっ、バカな・・・」
「マローネ嬢!私とも腕相撲してくれっ!」
「陛下!?」
「あなた!!」
団長さんがゼェゼェ言っている横から王様もボクの手を握った。
「ふん!! ・・・ふんっ!! わははは!凄いな宰相!こんなことがあっていいのか!?」
王様は途中からとても楽しそうに笑っていた、どうしたんだろう?
取り敢えずボクの力は王様も認めた
落ち着いた王様は居住まいを正すと真剣な顔になった。