決戦 5
王太子様、レオン、そして俺は城の2階、城門近辺を見渡せる部屋へと移動した。
アランは「マロンが戦うのに自分だけ安全圏に逃れるなんて出来ない」と言って、鎧を着込んで副隊長の傍に残った。
傍に騎士2人だけを残し、半分は敵のいる城門
4分の1は王妃様の宮、残りの4分の1は裏で攻城兵器を出すタイミングを見計らっている。
と言うのも、攻城兵器は城を相手にするものだ
動き回る敵を対象に使用する物じゃない。
動きが鈍り、ここぞと言う時にトドメに使う予定だった
丸太の先を尖らせたものを数本、台車に載せてぶつける。
投石器なんてピンポイントで当てられる訳もなく、吟味した中ではコレだけが頼みの綱である。
マロン次第ではあるけど、いくらあいつが強いって言ってもティラノサウルスは分が悪過ぎるだろ。
「これは・・・」
「まずいな・・・」
阿鼻叫喚とはこの事か
いや、見た感じ死者はいないけど
「うわー!」
「皆、耐えろー!!」
「ひいっ!」
フルプレートアーマーを身に付け、大盾を構えた騎士がティラノサウルスの突進に吹き飛ばされた。
腰も引けてるがあんなの相手にして逃げないだけマシだ、俺なら逃げてる。
大半の騎士はラプトルにかかりきり、1匹につき3~5人で手一杯。
こっちも1匹でも逃したら、それこそ戦闘能力の無い城内に残る人達が死ぬ、勿論戸締りを徹底させ避難はさせているけど。
ゴッ、ガンッ!
ゴロゴロと転がる騎士達
踏まれても多少ひしゃげる程度だし、噛まれないように立ち回っているのは流石戦闘のプロだ。
けど・・・
「決め手に欠けるな」
冷静に王太子様が分析する
うん、火力が足りない。
タンクが何人居ても仕方がない、弓矢は表面に刺さってはいるけど倒せはしないだろうし。
その時だった、黒い鉄砲玉がとんでもない速度でティラノサウルスをぶっ飛ばしたのは
「えーい」
「ギャウウッ」
首の根元に体当たり、あの巨体が先程の騎士達と同様に転がった。
いやいやマジでアイツどうなってんの?
***
城門が見えてくると小さなトカゲと大きなトカゲが居た
大きなトカゲは騎士さん達をボカンと吹き飛ばして暴れている、アレをやっつければいいのかな?
「えーい」
「ギャウウッ」
体当たりをするとズッシリと重さを感じた、とても重い。
「は?令嬢っ!?」
「今だ!隊列を立て直せー!うわぁー」
ボクがトカゲをぶっ飛ばすと、バラバラに散っていた騎士さん達は大きな盾を構えて固まった。
でも、またボカンと体当たりで吹き飛んだ、大丈夫?
「マロン!」
アランがガッチャガッチャと走って来た、鎧を着ている。
「アランどうしたの? レオンは?」
「レオン様達はあそこだ、前線に立つ訳にはいかないからな、それより大丈夫か?」
「大丈夫?」
「本来ならマロンが戦う必要は無い、今もレオン様の願いなんて言っているが実際は王太子殿下の要請だ、断りにくいがそれでも・・・」
「えへへ、心配してくれるんだ」
「当たり前だろ・・・」
「大丈夫、あんな大っきいトカゲが暴れたらレオンも困るもんね、レオンが困るならエリーも困るもん、ボクやるよ!」
「・・・すまない、いや、ありがとう」
「任せて!」
ボクが笑って請け負うとアランは優しく撫でてくれた
「それと、出来ればで良いんだが、いやほぼ不可能だと思うんだけど・・・」
「?」
「生け捕りに出来ないか? アレはリオン様なんだ」
「えっ!? あの大っきいトカゲ、リオンなの?」
「ああ・・・、倒すだけでも無茶な話だが、王族を手に掛けるのは王族でなければならない筈だ、勿論王太子殿下もレオン様も何も言ってはいないのだが・・・」
「へえー・・・、・・・・・・・・・・・・」
「マロン?」
「大っきくなったねえ、リオン」
どうやったらあんなに大っきくなるんだろ
ボクも頑張れば大っきいオコジョになれるのかな?
「・・・そうだな、いや、・・・うん、気にするのはそこではないんだが・・・」
騎士さん達は再びボカーンと弾き飛ばされていた。