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王太子

「そうか」


兄に大講堂での顛末を報告すると短く答えただけだった。

バケモノなどという話を聞いて驚くでもなく、ただただ冷静に思案に耽る様子に違和感がある。


「兄上は、知っていたのですね」


でなければ説明がつかない、トカゲのバケモノ、恐竜とやらの存在、リオンの事・・・


「・・・父上が帝国へ渡っただろう?」

「はい」

「帝国から齎された情報は犯罪者に関する警告だった」

「警告?」

「そうだ」


兄の話はこうだ

帝国でとある研究者が非人道的な実験をしていた。

人体実験を影で行っていた研究者は牢に入れられ、取り調べの後に処刑される事になっていたそうだ。


しかし研究者は何者かの手引きにより脱走

研究の一部が持ち出され、帝国に隣接する国へと逃れた。


「その、実験とは?」

「なんでも、「神の力を手に入れる」とされるクスリらしい」

「神の、力?」


兄は俺の質問に答えない


「研究者の隠れ家にはトカゲと人の合の子の様なモノが転がっていたそうだよ」

「それは・・・、まさかリオンも」

「十中八九そうだろうね・・・」

「それに神の力とは?」

「これは私の想像だけどね、恐らく大きな意味ではほぼ間違っていないとも考えている。

マローネ・リュミエール伯爵令嬢、彼女はエリザベス嬢のペットだったそうだね」

「はい」

「それは確かかい?」

「間違いありません、オコジョ、マロンでしか知り得ない極々私的なことをエリザベスにも確認しています、何故ここでマロンの話が?」

「マローネ嬢の話を全て信じるのなら、神とやらも確かに存在するのだろう、実際マローネ嬢は少女とは思えない程の力を有している、これは王家にも伝わる神獣や賢獣の記述とも合致する、それは知力であり武力であり正に神の力の如く」

「兄上、まさか・・・」

「うん、マローネ嬢の存在、まあクロード君もか我が国だけで2人居るなら、他国にも数名似た人間が居ると仮定しても不思議じゃない、オコジョ、猫、そうだな犬や鳥に猪、熊も有り得るかも、トカゲやワニも・・・」


確かに我が国だけに特別な存在が居ると考えるのは楽観的過ぎた、未知の世界の知識や無双の力を持つ人間なら国の対応としては囲い込むに決まっている。

自国の利益をわざわざ他国に教えてやることもない、帝国の研究者とやらは本人がそういった存在なのか、そうでないにしても人体実験に使われたという人間はマロンやクロードといった存在なのだろう。


その力を取り出して使えるようにする

リオンやその他の令息、ラプトルとかいうバケモノはその成れの果てか・・・



「どちらにせよリオンは探し出さねばならない、レオン分かっているな?」

「・・・はい」


クスリと研究者が国に入って来ているのは確定

どのような理由があれ、リオンは相応の処罰の対象だ。

双子の弟の行く末を考えると気が重い・・・


「父上が居ない内は私が指揮を執る、出来るだけリオンは捕縛出来るように図らおう、クスリによって変化したのならば逆にクスリによって戻す事も出来るかもしれない、その為には」

「マロン、いえマローネ嬢の協力は欠かせません」

「うん、ラプトルとやらは言わずもがな、クスリを投与された者は力が並ではないし、対抗策は必要だ」

「騎士団の半分を取られたことが痛いですね」

「それはどうしようもない、父上が道中襲われてはそれこそ本末転倒だ」


いくら強いと言っても貴族の令嬢だ

本人はエリザベスの護衛侍女になりたがっているが、護衛は護衛、専守防衛であって戦闘を主目的にする訳じゃない。

やはり女性の力を当てにするのは気が引けるし、伯爵と夫人も良い顔はしないだろう。

騎士団が揃っていれば護衛にも捜索にも人が割けたが無い物ねだり、動かせる人を使うしかない・・・


「現場は副騎士団長とレオンに任せるよ、マローネ嬢の協力が得られた場合にサポート出来る人間は必要だ、私は情報統制と全体の指揮を」

「はい」


エリザベスは王妃の宮に戻した

母上、王太子妃、公爵令嬢エリザベスはこの国に絶対必要な存在だ

少ない騎士を効率良く運用するなら護衛対象は1箇所に固めるしかない。

先ずはアランに説明して、それからマスティーゼ公爵家、リュミエール伯爵家の協力を取り付け、恐竜の存在を知っているメイベル侯爵家のクロードにも知恵を借りた方がいいだろう。

俺は王太子の部屋から出ると早速筆を取った。







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