アイツが居まして
第二王子レオン、公爵令嬢エリザベス、侯爵令嬢タチアナ、従者アランの私的なお茶会には必ず邪魔者が居た。
「レオン、エリザベスが来ているなら言ってくれよな」
「リオン、何故此処に居る」
「なんだよー、義理の姉になるんだ別に顔出しても良いだろう?」
金髪碧眼、レオンと全く同じ容姿の男性
レオンは眉を顰めた
双子の弟リオンが私的なお茶会に足を踏み入れて来たからだ。
いくら兄弟とはいえ別の人間、個人的な集まりに呼ばれもしない者が現れてはいい顔はしない。
特にリオンは・・・
「やあエリザベス、久しぶりだね」
「・・・はい、リオン殿下」
レオンと一緒に過ごしている公の場以外で淑女の仮面を被る事のないエリザベスが静かに顔を作って挨拶を交わす
「俺のことはリオと呼んでくれって言っただろう、レオンの事はレオって呼んでるんだからさ」
「わたくしはレオン様の婚約者ですので、他の殿方の愛称を呼ぶ訳にはまいりません」
相手が王族、レオンの双子の弟リオンといっても毅然として対応をするエリザベス
この馴れ馴れしい男、リオンは度々こういった風に顔を出してはエリザベスにも粉を掛けていた
そう、リオンは女性関係が派手で恋人が数人居ると噂されている。
真偽の程は不明だが、だからこそエリザベスは一線を引いていた。
自分の婚約者が王族で双子の意味を理解している
口さがない者に「双子ならどっちでも良いんだろう」と言われては堪らない、エリザベスは真実レオンを慕っているのだから。
夜会もきっちりレオンと三曲続けてダンスをするし
何故か度々誘ってくるリオンに対しては断っていた
そのお陰で身持ちの堅いエリザベスとレオンは仲睦まじい婚約者として有名であるし、リオンはプレイボーイとして知られているので「お堅いエリザベス嬢を落とそうとしてムキになっている」と見られているのが大勢である。
「相変わらず堅いなあ、そんな所もいいけどね、同じなんだから俺と遊ん、」
「リオンいい加減にしろ!」
双子の弟を睨み付けるレオン
言っても言ってもエリザベスにちょっかいを掛けるリオンとは仲が悪くなっていた。
「双子なんだから俺と遊んでも問題無いだろう?」
などとは弟の口から聞きたくないし、エリザベスにも聞かせたくなかった。
昔はとても仲のいい兄弟で性格も似ていたのに、いつからかエリザベスを間においていがみ合うようになっている
幼い頃から一人を愛する誠実な兄レオン
対して、複数の恋人を持つ弟リオン
二人の反りは全くの逆になっていた。