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事件 3

えっと、名前なんだっけ?

アタマのおかしい人・・・

エリーの前で勝手に転んで、エリーがいじめてきたと言ったあの子。


「クロスケ、あの子なんだっけ」

「あの子? 壇上のか」

「うん」

「俺は知らねえぞ」

「あ、そか、ほらボクが学校に忍び込んだ時のアタマのおかしな子の話」

「ああー!エリザベス様の前で転んだアタマのおかしい男爵令嬢?」

「そうそう」

「あー、んー? いやあの時確かにおかしな子の話はしたけど、名前は聞いてないんじゃないか?」

「あれ、そだっけ?」

「うーん、多分? 名前は聞いてない、はず」


というかどういう事だろう?

突然壇上からエリーに向かって「婚約を破棄する」って、なんでパーティーで言うの?

しかもアイツは・・・


「どう言った事か理解出来かねま」

「黙れ!貴()()と問答するつもりは無い! ギリアムやれ!」

「はっ!」

「っ、きゃあっ!!」


「えっ」


エリーが応えようとした瞬間、アイツは大声で遮り一緒に壇上に居た男に命令した。

男はエリーの頭を押さえ付けて床に座らせた、此奴っ!


「おいおいおい待て待て待て!」

「待たない」


エリーにあんなことをして許せるはずが無い、やっつけてやる。

クロスケが止めてきたけど関係ない



***



卒業パーティーに向かう為、王宮の一室で身支度を済ませてレオ様を待っているとレオ様の遣いと名乗る従者が口頭で連絡して来た

少し遅れてしまうから先に大講堂前で待っていてくれ

今思えばおかしかった、レオ様に直接確認をしに行けばよかった。


エマリーを伴って大講堂前で待つ

しかし待てど暮らせどレオ様は現れなかった

もうこの時には手遅れだったと思う

騎士の格好をした男が近寄り、エマリーを強引に押し退けられると私は無理やり大講堂内に押し込まれてしまった。

男の風貌は騎士の顔とは思えない、顔で判断するのは申し訳ないと思ったけども王国騎士が備える精悍であり高潔な凛々しさのある雰囲気ではなく、どこか粗野な印象が強かったからだ。


大講堂内は既に皆揃っていて、タチアナが来てくれてホッとしたのも束の間・・・


「皆、聞け! 私レオン・ヴェルレクはエリザベス・マスティーゼ公爵令嬢との婚約を破棄する!」


信じられない台詞が耳に届いた

但し、私には判る、顔を見るまでもない

レオ様を名乗る人物は勿論レオ様ではない

声は似ていて顔もそっくりな壇上の彼はリオン・ヴェルレク王子殿下、双子のレオ様の弟。

そもそもレオ様が私と婚約破棄なんてする理由がないと信じている。


「え、レオン様が婚約破棄?」

「嘘だろ、あれだけ仲睦まじかったのに?」


しかし周囲にとってはレオ様とリオン様の見分けが付かないようで、私は慌てて指摘しようとした。

どんなに荒唐無稽な事でも王族の発言はそれを事実としてしまう、何故リオン様がレオ様に成り代わりこんな事をしたのか、レオ様とアラン様はどうしているのか考える事は沢山あるけれど、このままでは大変なことになってしまう。

タチアナが怒って何か言いそうになったのを制して、私から離れさせた、巻き込む訳にはいかない。

恐怖に震えそうになったけど私は公爵令嬢、こんな事でいいようにされてはならないと自分を奮い立たせた。


「どう言った事か理解出来かねま」


次の瞬間、信じられない事が起きた

私の発言を大声で遮り、力づくで抑え込まれてしまった

私を押さえ付ける彼は確か騎士団長様の次男、正義感溢れる方でリオン様の側近候補、女性に手をあげるような方ではなかった筈なのに・・・

痛みとビクともしない力に怖くて、悔しくて涙が滲む

ヘアピンがパラパラと外れ、レオ様から戴いた髪飾りが床に落ちた。

誰も助けてはくれない、王族と公爵家の諍いに口を挟める者などいなかった


唯一反論の出来る私の口を力づくで封じるのは上手い手だ、どういうつもりか分からないけどレオ様を騙るリオン様は本気のようだ、そんな風に他人事の様に考えていると


バキュッ


「ぎゃああああっ!!」


ヒュッ、ダァン!!


上から押さえ付けられていた圧がふと抜ける

頭上で何かが潰れる音と彼の悲鳴が静まり返った大講堂に響き渡った。


「大丈夫? エリー」


優しく気遣う声が聞こえた。




一部誤字もどきがありますが誤字ではありません。

ご了承ください。

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