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兄と婚約者 2

「やあ、ファナ・・・」

「あら、お久しぶりですわねリュミエール子息様」

「う」

「大体あなたは・・・」


ジュードは婚約者からの先制パンチにへこんだ

この3年近く関係が悪化していて、その原因はジュードがモゴモゴとして婚約者とアランのキスシーンを問い質すことが出来なかったからである。

早速ファナがチクチクと言い出した


ファナにとっては婚約者ジュードが突然距離を取ったと思えば、何かを聞きたそうにしている彼に何度も何度も何度も何度も何度も会話の中で水を差し向けたのに、モゴモゴモゴモゴモゴモゴ・・・

煮え切らない態度のジュードにイラっとした彼女は

「ウジウジしてないでハッキリ仰って下さいませ!男でしょう!?」

と真正面からぶつかった。

しかし「いや、別に・・・」とジュードのひと言でプチンと何かが切れたことで没交渉気味になっていた。


そんな2人の関係を両家が気を揉んでいた

マロンが養子としてリュミエール伯爵家に入ったので、将来の義理の姉妹になるから顔合わせをしましょう

これを呼び水にどうにか出来ないかという親4人の心遣いであった。




「?」


仲があまりよくなさそうで首を傾げた

ボクの中で婚約者と言えばエリーとレオンだ

仲良しだから結婚するんでしょ?

エントランスでママとお兄ちゃん、ボクの3人でファナ・・・さんを迎えたけど、お兄ちゃんの様子がおかしい。


「ねえママ」

「なにかしら?」

「お兄ちゃんとファナさんて仲悪いの?」

「そうねえ、ファナさんは分からないけどジュードは照れてるだけだと思うわ」



「なっ、違いますよ母上!」

「照れてる? ほほほ御義母様、ジュードはヘタレているのですよ、何年もグズグズと切り替えもせずに」

「うぐ」

「照れてるって事はお兄ちゃんはファナさんのこと好きって事?」

「うるさいっ!キスもした事の無いお子様は少し黙ってろ!」

「キス?何故ここでキスなの?」

「ジュード落ち着きなさい」

「キスした事あるけど」

「え?」


もうひっちゃかめっちゃかでごちゃごちゃである

ジュードは拗らせ顔を真っ赤に、ファナはイヤミを言いつつ突然のキス宣言に疑問をぶつけ

マロンはキスした事あると、人にわざわざ言うことも無いことを言う。

場は混沌に包まれた。



「あら、キスなんて誰としたの?」

「アランと」

「まあ!」

「はああーっ!?アランの奴、お前にも手を出しているのか!」

「にも? にもって何、ジュード、あ、なんか見えてきたわ・・・」

「ぐえっ」


ファナがジュードの発言にピクリと反応した

ジュードのタイを締め上げつつ、グっと引き寄せた


「ねえジュード、あなた何を考えているのかしら?」

「いや、なんで」

「なんでもない訳ないでしょう? とっとと吐きなさい」

「・・・」

「ジュード?」


ファナの恐ろしい相貌にポキンと折れるジュード

学生時代、中庭で見たファナとアランのキスシーンのことを遂に渋々吐き出した・・・


「ふ、ふふ、私とアラン様がキス?」

「・・・ファナ?」

「はあー、馬鹿じゃないの? そんな事をずっとウジウジしてたの? 聞けばいいじゃない」

「だって・・・」

「あのねえジュード、私の唇とアラン様の唇がくっ付いたのでも見たの?」

「見てない、けど、あのシーンは・・・」

「木の枝よ」

「え?」

「剪定した木の枝が突風で飛んで来たの、それが私の髪に引っかかって丁度通りがかりのアラン様が取ってくれたのよ」

「は? いや、でもファナは顔を赤くしてたし」

「あのねジュード、私も令嬢の端くれ、女の子なのよ、髪の毛に枝が引っかかっただけでも恥ずかしいのに、男性に苦笑されながら髪を触られた私の気持ち解る? 普通に恥ずかしいに決まってるじゃない」

「・・・ごめん」


ファナは呆れながら事の次第を紐解いた

結局はジュードの勘違いと一人相撲で、ファナと家に迷惑を掛けた事が分かった。

ジュードはホッとしたような情けないような、でもやっぱりホッとしていた気持ちの方が強かった。

嫌いな相手にここまでモヤモヤすることは無いからこそのジュードの拗らせである。


「ジュード」

「な、なに、かな」

「取り敢えずお父様とお母様に謝罪しなさい、そしたら仕方なく水に流してあげるから」

「あ、ああ、うん、本当にごめん」

「いいわよ、本当にバカね」


本当に馬鹿だなとジュードも理解したので、ただただ小さくなるのみだ。


「ああ、それと」

「え、んぐっ!?」

「わー」「あらあら」


ファナがジュードのタイを更に引き絞り、ぶちゅーっと唇を重ねた。


「な、な、な、」

「これが私のファーストキス、宜しい?」

「は、はい」


ファナは親指でグイっと唇を拭って言い放つ


「なら今すぐお父様に謝罪の手紙でも書きなさい、今日はもう貴方の顔は見たくないわ」

「はい・・・」


ファナの男らしい言動とは裏腹に彼女の耳は真っ赤だった

3年も関係の悪化があったのにも関わらず婚約について何も揺らぐことがなかったのは、つまり彼女もジュードのことを憎からず想っていたからで・・・

今日は恥ずかしくて顔を合わせたくないからまた今度ね、という照れ隠しである。


ジュードはポケーっとして部屋に戻り手紙を認めた。


この日は夫人、マロン、ファナで恋バナに花が咲いたとか咲かないとか。






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