お茶会デビュー 5
「御機嫌よう初めまして」
ボクはテーブルに着くと隣の子に挨拶した
隣の子はミリア・アルゴー男爵令嬢さん、ミリアさんは丁寧に挨拶を返してくれた。
すると同じテーブルの他の子も「私は、」「わたくしは」と名乗ってくれた。
レナの予想だと
「私だったらまず一発目は無視から入るわね」
と言っていたけど、そんな事はなかった。
「あの!マローネ様は平民で引き取られた養子って本当なんですか?」
「ええ、本当です」
早速、養子に関する質問が飛ぶ
「マローネ様はどういったご縁でリュミエール伯爵家に?」
「わたくしの事は様と付けなくても良いですよ、ミリアさん」
「あ、じゃあマローネさん!」
「はい!」
「えと、それで・・・」
「そうですね、とある御家にお世話になっていた時、お母様が家庭教師として訪れた頃からのご縁です、その後は色々とあってメイベル侯爵家の侍女見習いをしていて」
「御家!? メイベル侯爵家!?」
「はい、まあ居候と言いますか・・・」
マロンがついたテーブルは男爵家と子爵家の令嬢達のテーブルだった。
貴族と言ってもピンからキリまで
男爵家や子爵家は平民と関係性が近い、使用人の大半は平民で嫁ぎ先も貴族であったり裕福な商家や幼馴染の家であったりと庶民感覚が強い者が多かった。
だからこそ直球でマロンの身の上話を聞いたりもするし
なんなら男爵家でさえも貴族付き合いは面倒な事があるのに、平民から伯爵家に入ったとなれば大変だろうと同情的な者さえ居るくらいである。
レナのように気位が高い男爵令嬢も居れば
マロンの隣に居るミリアのように親しげに話す令嬢も居た。
「マローネさんは本当に平民なの? 普通の貴族に見えるし所作も綺麗、ねえ、みんなもそう思うよね?」
「ボ・・・、あわわ、お母様が親身に教えて下さったお陰です」
危ない・・・、ミリアは話しやすいからウッカリしそう
ボクは令嬢、ボクは令嬢・・・
ミリアが周りの令嬢にも話を振り、和やかな空気の中でマロンは失言しそうになった。
マロンの方も貴族になった人間にありがちな高慢な態度は無いので、同じテーブルの令嬢とは親しくなりつつあった
しかし・・・
「あらいやだ、匂うわ」
「本当に、何の匂いかしら」
「堪らないわね!」
金髪巻き毛の令嬢を中心に
赤毛でそばかすの令嬢と茶髪で目つきの悪い令嬢が左右に侍りながらマロンに近付いて来た。
扇で鼻から下を隠してはいたが、その瞳は雄弁に嘲りの色を湛えている。
和やかな空気は霧散し、ミリアも他の令嬢も顔を凍りつかせて俯いた。
レナ「あーあ・・・」