お茶会デビュー 4
レナは会場の端の方へ寄って「うわあ、始まったわ・・・」とイリアとマロンを見ていた。
本来、茶会や夜会でお付きの者は別室で待機するのだが、念の為マロンをサポート出来るようにと場に残る事を許されていた、勿論許したのは侯爵夫人。
試されているのはマロンだけではなかった・・・
メイベル侯爵家とリュミエール伯爵家を除く他の家
「マローネ遊んでいらっしゃい」
「はい」
「・・・良いの? イリア、1人で行かせて」
「ふふ、何も心配していないわ、あの子は私の娘ですもの」
「あら、ふふっ、そうね」
侯爵夫人とイリアはなんでもない様に話し出す
同じテーブルの夫人の内、2、3人が顔色を変えて席を立った。
たった1ヶ月前に貴族になった平民の娘を、しかもデビューとされる茶会で1人で行かせてしまう事に強烈な違和感を感じた夫人らである。
リュミエール伯爵家で平民の子を養子に迎えた事は社交界で知られている、どのような女の子なのか、出身は、人間関係は、それとなく探ったり調べたりしたがどうにも情報が出て来ない。
孤児院から拾ったのか、平民の家から拾ったのか
謎の養子に興味津々だったので今日のお茶会はとても楽しみにしていた夫人令嬢は多い。
あわよくば弱味を握り、立場を解らせてやろう
いや平民あがり如きが社交界など烏滸がましい、洗礼は必要だ。
今日の茶会に招かれたものはマロンを嘲笑いに来たと言って良かった。
いざ招かれた夫人達は養子本人を見た
ドレスは伝統的なデザインをベースに、しかし若い娘向けにアレンジされた物である、多分新作ドレス・・・
色使いはブラウンやベージュが多く、落ち着いていて好感が持てた。
同年代である我が子や他の娘達はピンクや紅、オレンジといった明るい色使いのドレスなので、悪く言えば地味、良く言えば地に足を付けた落ち着いた印象を受けた。
恐らくイリア夫人の意向がある事は容易に見て取れる
髪の毛は平民だったと言う噂通りの短さであったが
軽く結われバレッタで留められていた、そのバレッタもやはり地味だったが彫金は細やかで品の良さがあった。
侯爵夫人と伯爵夫人の余裕ある会話と
手の込んだドレス、いつの日か夜会で夫人が身に付けていたバレッタが養子に与えられている。
席を立ったのはこれらに気付いた者たちであった
自分も娘も家を出立する際に、平民あがりの養子を侮り笑いものにするくらいの意識で茶会に来た
しかし、これは手を出してはならないと直感的に思い
慌てて娘にひと言「今日は様子見をしなさい」と諫めに行ったのであった。
その行動は正解だったと理解するのは、すぐのことである。