お茶会デビュー
リュミエール伯爵家に来て約1ヶ月、今日は初めてのお茶会だ。
朝からお風呂に入って、隅から隅まで洗われる
髪を乾かし、なんか色々とネットリ練り込まれてドレスを着た。
ドレスはママが選んでくれたものでクリスが準備してくれた、クリスは「新作よ、うふふ」と言っていた。
どうやらネオクラシックとか言うドレスで、伝統的なデザインを踏襲しつつも若い人向けにクリスが興した新しいブランドらしい。
それとボクの短い髪でも、お茶会みたいな行事に出る場合は何かアクセサリーを着けないといけないとかで、これもママが用意した髪飾りが着けられた。
数代前に伯爵家が王家から賜った品物で、代々修復を重ねて大事に継がれている物らしい。
鈍く光るブロンズ色のバレッタ、中央には当時の王国では貴重だった真珠がついている落ち着いたデザインだ。
「マロンくらいの子が着けるには少し落ち着き過ぎたデザインだけど、これを着けていればきっと守ってくれるわ」
「守る?」
「ええ」
「それってどういう・・・」
「奥様、そろそろ奥様のご準備も」
ママに聞き返そうとしたら、準備の為に行ってしまった
ボクの着替えにずっと付き添っていたからママの準備は終わっていない。
なんでバレッタがボクを守ってくれるんだろう?
「意味が分からないって顔してるわねマロン」
「レナ、うん・・・」
「あのね、そのバレッタは王家から賜った伯爵家の家宝な訳、そんな大事で貴重な逸品を養子のマロンに与えているというのはイリア夫人だけでなくホランド伯爵様もしっかりとマロンを子として尊重している証なのよ」
「え? うん、まあボクはパパとママの子供だよね?」
「そうだけど、視点はそこじゃないのよ、マロンが大切にされていると見た目で分かるようにしておけば下手なちょっかいは出してこない、平民の養子だから心配しているのよ」
「あー、貴族ってめんどくさいねえ」
「アンタね・・・、いえマロンも貴族だけどね!」
レナが面倒くさそうにしながらもボクに分かりやすく教えてくれた。
最近ではレナはボクのことをマロンと呼ぶようになった
ママが「仲が良いのはいい事だけど、しっかりと線引きはしなさい」と言ってからそうなった。
ボクも先生のことはママ、ホランドさんのことはパパと呼ぶようになった
「アンタいつになったら夫人と伯爵の事を父と母って呼ぶつもりなの? 伯爵家に入ったんだからその辺もしっかりしないと今度はアンタが家族を認めていないって見られるわよ」
と、これもレナが教えてくれた。
ボクは両親が居なかったから分からなかったけど、確かに養子になったしその通りだと思ってホランドさん、先生と呼ぶようになった。
ママと呼ぶと先生はぎゅうううっと抱きしめてきた
ボクはママのふかふかの胸が大好きだから嬉しかった。
「マ、マ、マローネ、私は!?」
ホランドさんが自分の顔を指差しながら言ってきたから「パパ?」と言うと、突然
「うおおおおおーっ!!マローン!」
と大きな声を上げてボクを持ち上げてクルクルと回された。
目が回ったけど、パパはひとしきり回り終えるとママと2人でギュウギュウと挟まれた。
よく分からなかったけど、後々よく考えるとエリーがボクのことを「マロン」と呼んだ時はボクもとても嬉しかったから、多分似た様な感じなんだと思う。
ジュードお兄ちゃんを見かけた時に「お兄ちゃん」って言った、その時はとても奇妙な顔をして走って行ったから一概にそうとも限らないらしい。
人ってとても複雑だ・・・
予約忘れてました。