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おやすみなさい

しゃかしゃかとマロンの髪を洗うイリア

浴室にはマロンとイリアの二人きりである

扉を1枚隔てた先に侍女は待機しているが、母子2人の触れ合いに加わる事は無い。


不慣れな親子1日目とは思えない程にイリアはマロンに対して慈愛の目を向けている

貴族の夫人がこの歳の娘の髪を洗ったり世話を焼いたりする事はないのが常識の世界で、平民の養子マロンへの伯爵夫人としてのこれらの行動は屋敷の使用人全てにしっかりと知らしめていた。


どのような出自であろうと奥様が愛しておられるのは明白、ならば使用人たる自分達が平民だなんだと口を挟むことは有り得ないのだと、マローネ伯爵令嬢に誠心誠意仕える心持ちを定めた。



勿論、ホランドとイリアは自分達の行動次第でマロンの屋敷内の立場は決まると理解しているので、今日1日の行動はそういった周囲への打算的な思惑は多分に含まれていた。


しかし根本的な話として念願の娘であるマロンは可愛くて仕方のないことも事実で

優しく構い倒す2人は心から愛しく思っている行動でもあった。

マロンも素直な気質なのでお返しにお茶を淹れたり

撫でられたら嬉しそうにしたりとわかり易く感情を返すので余計に可愛かったのである。




「先生、ボクも洗うよ」

「あら、ありがとうマロン」


やはり入浴でも髪を洗われ背中を流されたマロンはお返しにイリアの背中を泡立てたスポンジで擦って流した。


「さ、お風呂に入りましょうか」

「うん」


浴槽は複数人が入る大きさではなかったが

イリアが先に入り、マロンは抱きかかえられるように胸の前、膝の間に収まった。

後ろからイリアはマロンの濡れた頭を優しく撫でる


「えへへ・・・」

「どうしたの笑って」

「先生が撫でてくれるから嬉しくて」


エリーはいつもボクを優しく抱きしめて撫でてくれた

ブラッシングもしてくれて、キスもいっぱいして

ふたりでギュッとして寝るんだ。

温かくて、エリーの胸からトクントクンって音を聞きながら眠る、ボクはそれが大好きで・・・

その事を先生に話すと今日は一緒に眠ることになった

嬉しかった、だってひとりで寝るの寂しいもん



マロンはこれまでエリザベスと共寝をしていた

それはベッドでもあったし、そうでない時でもエリザベスのベッド脇や枕元に寝床があって必ず近くに居るように寝ていた。

侯爵家へ招かれた初日にしてアランの寝床に潜り込んだのは、寝ぼけていた事もあるがひとりで寝る事のなかったマロンにとって中々の恐怖があったことも理由の一つである。

その後は「言われたからひとりで寝ていた」のであって

寂しさは付きまとっていた・・・


お風呂から上がり髪を乾かすと、そのままイリアはマロンの手を引いて同じベッドへと入る。


「先生・・・」

「なあに」

「あのね、ギュッとしていい?」

「もちろんよ」


ボクはベッドの中で先生の胸に飛び込んだ

クスクスと笑った先生はギュッとしてくれた


ちゅ・・・、と頭にキスをされて「おやすみなさいマロン」と言われる

エリーと一緒に寝たことを思い出しながらボクは先生の柔らかい胸の中でぐっすりと眠った。



おやすみなさい、せんせい、エリー・・・







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