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伯爵家

馬車に乗って程なくリュミエール伯爵家に到着した

マロンが先生の屋敷に来るのは初めてで、キョロキョロと視線を巡らせた。


「今日から此処がマロンの家になるよ」

「ここが・・・」

「さあ行きましょう、皆、首を長くして待っているわ」

「うん」


馬車からはホランドさんが先に降りた

次に先生で、ボクが降りようとすると両側からそれぞれホランドさんと先生に手を差し出された。

手は優しくて温かくて、ボクは屋敷の中まで2人の手を握って歩いた。

ちょっと嬉しかった・・・


「マロン、良いわね?」

()()()()()()()()()


ボクは馬車の中で先生と立てた作戦通りに動いた。



——————————————————————————



「馬車が到着したぞ!」


従者の1人が2階から降りて来て声をあげた

エントランスに集まっていた伯爵家使用人一同は背筋を伸ばして顔を引き締めた。

ホランドとイリアが連れて来る養子はどのような子なのか、知っているのは侍女長と執事のみだったが余計な先入観は与えない様にと他の使用人には何も伝えられていない。


濃紺のカーペットを挟んで左右に使用人が

そして、唯一カーペット上の端に立つのは執事クラインが待ち受けた。


ガチャリと開かれた扉から現れたのは旦那様と奥様に手を繋がれた女の子。


「おかえりなさいませ旦那様、奥様、そしてようこそいらっしゃいましたマローネ様」


扉が開く直前に皆は頭を下げていた、唯一クラインだけが顔を上げてお嬢様を待ち受け、挨拶と共に頭を下げる。


「皆ご苦労さま、楽にしていいよ」


旦那様の声と共に一同は頭を上げて養子である女の子と対面した。



ざわり、と空気が変わる



使用人が声をあげた訳ではなかったが

ある者は目を丸くして驚き、ある者は口をはしたなくも開けていた。


栗色の髪にライトブラウンの瞳、平民にありがちな色

しかし平凡なのはそれだけで、肌は白く、可愛らしい顔は本当に平民の労働者階級の人間だったのかと驚くばかりである。


「初めましてマローネと申します、ふちゅ、不束者ですが宜しくお願い致します」


ぎこちなく紡がれた挨拶は途中つっかえたものの、恥ずかしがって照れる様子は愛らしい

それにドレスの裾をちょこんと持ち、礼をする女の子からは品の良さと所作の美しさが滲み出ている。

大抵の平民は高いドレスを着せても、着られている違和感の様なものが付き纏うのに対し、マローネにはそれがなかった。


直前までは「平民の伯爵令嬢?」と口元を歪ませて笑っていた使用人もこれには黙るしかない。


「これは御丁寧に、初めまして私は屋敷の執事をさせていただいておりますクラインと申します、マローネ様御用の時は遠慮なくどうぞ」


クラインの挨拶を切っ掛けに、皆は驚愕の硬直から解放された。

口を閉じて、平然を装いマローネに注目する。



主役の陰でレナは内心ため息を吐いた


「美人って本当に得するわ・・・」


レナの予想では伯爵家の人間には確実になめられるであろうと思っていたのだが、実際顔を合わせると()()()だけで黙らせてしまったのだから呆れるばかりである・・・


そう言えば侯爵家に来た時もあっと言う間に先輩侍女(おねえさま)を籠絡していたな、貰える筈だったレース編みも結局手元に来なかった。

コイツ、やっぱり気に入らないとレナはマロンを見つめていた。






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