拾われまして
「カッ!」
どうだ!ボクの会心の威嚇
「きゃああっ!可愛い、貴方わたくしの所へ来なさいな」
「カッ!?」
口を大きく開いて犬歯を剥き出し、鼻の周りに皺を寄せる
グッと目頭に力を込めての会心の威嚇
と本人は思っているのだが
元がオコジョでは威厳も畏れもへったくれも無かった
突如後ろから掴みあげてきた金髪碧眼の美幼女に披露した威嚇は効果がなかった。
オコジョはやさぐれていた
転生したのだ
オコジョに。
神は言った
「ごめーん☆キミの身体まだ完成してないんだよね、出来上がるまで適当に遊んでてっ☆」
なんとも軽い口ぶりで言われた
自分は転生したらしいが身体がないから出来るまで待ってろと言われたのだ。
前世の記憶はない、しかしぼんやりと人であったというのは理解していた
だがオコジョだ
オコジョの暮らしは辛かった
虫を食べ、鼠を食べ、木の実は硬く、果実は渋い
害獣(イタチ?)と思われたのか石を投げられ、弓を射かけられる
子供から泥をぶつけられ、魚に飛びつけば針が仕込まれて痛い思いをした
人としての記憶がほぼ無かったのは不幸中の幸いだった
まともな人間の精神だったら虫食に耐えられなかったし
鼠も同様である。
気分としては「人間のつもりなオコジョ」が最も近い表現だと思う。
人は、敵だ。
ボロボロの、真っ黒黒すけなオコジョが突然後ろから抱き上げられ連れ去られ(?)そうになったら威嚇のひとつもするだろう。
効きはしなかったが・・・
そして、オコジョは媚びた。
それはそうだ
孤児、もとい孤オコジョのように路上生活を送るより
構い倒されるストレスはあるが衣食住には困らない天国である。
主はエリザベス公爵令嬢5歳
子供にありがちな手加減のない構いようはちょっと、いやかなり堪らない
しかし、お風呂に入れられ、泡泡できれいきれい
ブラッシングされ、綺麗な水とミルクに新鮮な果物、美味しいお肉に温かいベッド。
媚びるのも吝かではないオコジョである。
「カッ!」(でもボク人間だからね!?)
ただオコジョにも小さな誇りがある
なんでも思い通りになると思ったら大間違いだ
人として(?)譲れないぁぁぁぁぁ~
オコジョはお腹をなでなでされて気持ち良くなりウットリと眠った
衣食住揃っておなかいっぱい、寝るなと言うのが無理だ
服は着ないけど
本能には勝てないのである。
(そこはダメぇぇー!)
オコジョは意外と敏感だった・・・
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