違和感
桜野 はなみの初投稿作品。
短い連載小説。
とうめいなあの子、それから僕の、悲しい悲しい恋のお話。
いつも通りの朝がやってくる。
朝、飲み慣れないコーヒーには角砂糖は3つも入れてしまう。でも苦い。僕は、大人にはなれやしない。
遅刻してしまうから、パンをくわえて走り、美少女とぶつかる________なんてシチュエーションはない。ちゃんと着席してパンをかじる。遅刻はしない。
「いってきます」
と小さくつぶやくも、聞こえてくるのは猫の小さな鳴き声。親は寝てる。別に寂しくはない。これが僕の家の日常なのだから。
家のドアを開ければ、家の前には一人の女の子。…ほら、寂しくないだろう?
黒髪、つぶらな瞳、赤いぷっくりとした唇。学校にいれば絶対にもてる。そんな子が立ってる。
おはよう、の代わりに小さく手を振ってくれる。
彼女ではない。僕が一方的に好きな人だ。
「おはよう」
僕も返してあげた。すると、彼女はにっこりとひまわりみたいな笑顔を見せる。
そう、可愛い。可愛いのだ。可愛いのだけれど、今日は違和感だった。
(おかしいな…。何も変わらないのに。)
そう思いながら、彼女と歩幅を合わせて歩み始めた。
土曜日、日曜日を通り越しての月曜日。
「ねぇ、今週末、どこにいってたの?」
僕が言えば、彼女は考える素振りをし、しばらくすれば「わからない」と言いたげに、苦笑いをしながら首をかしげた。忘れちゃったのかなぁ。
そういえば、僕はどこに行ったんだっけ。
どこかに、言った気がするんだよなぁ。すごく、大事なのに、早く忘れたかったこと。
真っ黒な服を着て、みんなでどこかに__________________
まぁ、夢かな。
僕は、少し早めに歩きがちな彼女の隣に並んで歩いた。