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そして彼は勇者になる  作者: 囿茅蜩
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旅立ちの日に

1-1旅立ちの日に


朝が明けた。

陽の光が眩しい。

旅立ちにして良い日かもしれない。


「旅立つんだから何かしらの準備はしないといけないな…うん。」

旅立つのだから何かしらの生活必需品は持っておきたいな。

しかし、ふと思った。


「先生!物がありません!どうすればよろしいでしょうか?」


(その辺で買えばいいだろ!そのくらい自分で出来るだろ!)


「この辺にそんな大層な店があるように見えるか?何にもない田舎だろうが!」


そう…ここは田舎である。

当然、でかい店などあるはずがない。

見渡せば田んぼやビニールハウス、透き通った川がある。

私は、生まれ育ったこの村が大好きである。(手のひら返し)


(流石に何もなしに野宿はきついだろう…確か、ここから北の方角に結構でかい街があったはずだよね?)


「ほう?やはり北か…。いつ出発する?」


(何言ってるの?今すぐこの村を出て、今日中には街に着く予定だよ。)


ファッ!?

何を言ってるんですかね?このロリっ子は…。


「あのですね…。祈さん?ここからあの街まで俺の見間違いでなければ72km以上離れていたと思うんですけど…。」


この村は「ど」が付くほどの田舎なのだ。

当然、交通機関などあるはずがない。


(…交通機関がないって昔に比べて結構落ちたな。)

少し間が空き彼女の口が開く。


(総力戦の後、この土地も朽ちちゃったからね。その後に他の土地に移住する人が跡を絶たなくて復興が全然だもんね。まぁ、しょうがないのかもしれないかもね。)


すごく話が重たい。

なにか打開策はないだろうか?

あっそうだ!


「な なぁ、別に交通の手段がないわけじゃないんだけど。」


(ん?あぁ、交通手段があるって?それを早く言いなさいよ貴方。)


まぁ、ちょっと不機嫌にさせてしまったかもしれないが話を先に進めよう。


「俺を育ててくれた爺さんがいるんだよ。

その人が確か、もう車には乗らないって言ってた気がするんだよ。」


(その車を借りるってわけね。)


あれ?俺に親がいないってことはスルーかな?


「あぁ、その車さえあれば今日中には着くと思うぞ。」


まぁ、何もなければだけどな。


(じゃぁ、早速その爺さんの家に行こうじゃぁないか。)


◇ ◇ ◇


「ただいま。」


昨日ぶりに帰ってきたがやはり落ち着くな。

畳の香りといい、屋根は瓦で覆われた昔ながらの家造り、最高だね!


(余韻に浸ってないで早く交渉を済ませて早く行くぞ。)


「はい、はい。」


全く、この家に居座るのも最後かもしれないっていうのに…。


「爺さーん、いますかね?」


「どうした?こんな朝早くから。」


俺はこれからの事を説明した。


「俺は、これから旅に出ようと思うんだ。

この村に帰ってくるかも分からない。

だから…。」


「あい、わかった。なら裏にある車を使え。

お前はもう15だ。車の操作ぐらい出来るだろう。」


あれ?爺さんと話が早くつきすぎてしまったぞ。

というか、なんでこんなあっさりとOKしてくれるんですかね。


「ちょっと待って!あれ、止めたりしないのか?」


「そんなもん、お前が決めたことだろ。

人の人生に口出しするような偉いもんじゃねぇからな儂は。」


焦る俺を他所にカッコイイ台詞を言ってくる爺さん。


「本当に行っていいんだな?」


「早く行けって言ってるだろ。

大事な用があるんだろう?

それを早く済ませて楽になれや。」


俺がすることが分かってるんですかね。

あと、「楽になれ」もなかなか気になるのだ

が…。


「…あぁ、分かったよ。今まで世話になったな。」


裏手に回り、車に乗りエンジンをかける。

実際、とても寂しい。

だけど、あんなことを言われたら止まるわけにはいかないよな?


「じゃあな」


俺は、PからDに入れ、ハンドブレーキを下ろした。

車は少しずつ動き出した。

その後、アクセルを踏み込んだ。

もう戻ることはない。


(ふと、思ったんだが)


「なんだ?」


(どうせなら生活必需品も貰っていけば良かったんじゃないか?)


「…あ。」


だが、もう戻れない。

止まることなく進み続けなきゃいけないからな…。だが、そんな大層な問題ではない。


いや、だってね。

あんな大口叩いといて「良かったら生活必需品もくれたら嬉しいな」なんて言って戻ってきたら、なんて言われるか考えだけでも恥ずかしい。


「あとのことは、移動中でもあっちに着いてからでもいいじゃないか。」


(はぁー、あぁもう滅茶苦茶だよ。)


まずは、北にある街を目指すことにした。

ある場所に行くまでの道のが長い。


◇ ◇ ◇


「この時が来たんだな…。」


老男は、何かを悟ったかのようにお茶を啜りながら一息ついていた。

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