表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
キューピッドと歩兵銃  作者: うにおいくら
~キューピッド登場~
7/59

手渡されたものは?

「なんだか、気分が悪いわ。すれ違う人すれ違う人、みんな顔に『なんでこんな小娘が』って書いてある。本当に失礼しちゃうわ」

麻美は憤りながら歩いていた。


「まあ、仕方ないんじゃないかな。麻美は可愛いよ。美人だと思うよ。でも僕は神様だからねえ……この神々しさは隠しようがないからなあ……」

とぬけぬけと言ったが、キューピッド自身にとっては事実を述べただけだった。


「何言っているの。さっきまで誰にも見えないようなシークレットモードになっていたじゃん」


「まあ、そうだけど……また姿を消そうか?」


「う~ん」


「そろそろ彼に遭遇するな……やっぱり姿を隠そう」

キューピッドはそういうと麻美の手を引いて細い路地に入った。


「ついでに麻美の姿も見えないようにしたから」

そのままキューピッドは麻美を両手で持ち上げると胸の前まで抱き上げた。

「何?急にお姫様抱っこ?」


「うん、今からちょっと飛ぶから……」


 そういうとキューピッドは麻美を抱き上げたまま宙に浮かぶと一気にビルの屋上まで飛んだ。彼の背中には白い羽が美しく生えていた。


「うわ!怖い!落ちる!」


「落ちないって。大丈夫だよ。僕がついているから」

キューピッドはそう言って麻美を安心させるとそのまま地上をじっと見つめた。


「うん。あそこにいる」

彼は市街地の広い公園に目をやりながら、その公園を見渡せるビルの屋上に降りて広げた羽根をゆっくりと閉じた。

そして麻美を優しく下ろすと

「ほらあのベンチに座っているのが彼だよ」

と指さした。


「あ、ほんとだ。あんなところでこんな朝早くから何してんだろう」


 高畠翔はその公園のいくつかあるベンチの内の一つに座って誰かを待っているようだった。


「う~ん。見ていたらその内判るよ。多分……」

 

 キューピッドは奥歯にものが挟まったようなはっきりしない言い回しで麻美の質問に応じた。

二人は静かにビルの屋上で高畠翔を見ていた。


 ほどなくしてそこへ私服姿の女子高生風の女の子がやって来た。彼は立ち上がってその女の子を迎えた。腹が立つほどさわやかな笑顔だ。

――あの笑顔に私は騙されたのよ――

麻美はそう思いながら二人の姿を食い入るように見つめていた。


ひと言ふた事ことばを交わした後、女の子は彼に手紙を差し出した。

高畠翔はにこやかに笑いながらその手紙を受け取った。女の子はそれを渡すと、高畠翔に負けないくらいの笑顔を見せるとその場から早足で去って行った。

 彼は暫くその後姿を目で追いかけていたが、彼女の姿が見えなくなるとベンチに腰を下ろした。そして貰った手紙を無造作に右肩にかけていたディバックに放り込むと、両膝の上に肘をつき何か考え事をしているようだった。


「あれはラブレターよね?」

麻美は隣で同じようにこの情景を見ていたキューピッドの顔を見上げて聞いた。


「まあ、そうだろうな……あの女の子は知り合い?」


「ううん。全然知らない子」


「そうか……」

キューピッドはそう言っただけだった。


 高畠翔はおもむろに腕時計を見て、ゆっくりと空を見上げてから立ち上がって歩き出した。


――なんで手紙を読まないんだろう――

 そう思いながら高畠翔の姿を見ていた麻美は、彼が立ち上がったので驚いてキューピッドの顔を再び見上げた。

その視線に気が付いたようにキューピッドは麻美を優しい笑顔で見つめて


「大丈夫。また直ぐに戻って来るから……」

と麻美に言った。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ