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特別編 頂き物SS、中島三郎助先生より

 今話は、中島三郎助先生の作品「Soldier's Belief~戦狗を継ぐ者~」とのコラボ回であり、中島先生から頂いたコラボSSとなっております。

 太嚨がシンシアを連れて脱走した後、惑星ルバトナではなく地球に身を寄せた場合の、IFストーリーとなっております。


 中島先生、この度は本当にありがとうございました。皆様も是非、ご覧くださいませ。


 地球に身を隠し、やり過ごそうとしていたタロウであったが、とうとう彼とシンシアは地球の貧民街の一角で追っ手に追いつかれ、精鋭の星雲特警部隊に追いつかれてしまう。彼らはすべてユアルクやヘイデリオンと共に戦い、背中を預けあったツワモノたち。その彼らがヘイデリオンの強さを知るからこそ、油断なくタロウとの距離を詰める。


「タロウ、もう諦めろ。その少女を渡せ」


 薄汚れたスラムの空き地、廃棄された小学校の校庭でタロウはシンシアを背後にかばいながら50人以上のかつての仲間と対峙する。


「……断る」

「ユアルク隊長には俺から口添えしてやる。お前に戻って来いともいわない。お前はもう平穏な世界で暮らすべきだ。だから、後生だ……その少女を渡してくれ」

「答えは変わりません」

「そうか、ならば仕方ない」


 その言葉と同時に、星雲特警たちが2人を取り囲むように周囲に展開する。タロウは苦悩しながらも、尚毅然としてかつての同胞に向き合っている。


 コスモアーマーを纏った手練れの捜査官が50人以上、しのぎ切れるか。


 タロウの背に冷たい汗が流れる。そして、同時に自らの袖を力無く握る少女に目を向ける。


 守らなければならない、この何の罪もない命を


 わずかに恐怖で震えるシンシアを勇気づけさせるために、ほんの少し微笑んでタロウは外套を勢いよく翻す。その時だった。





 甲高い銃声が校庭に響いた。




「あなたは?」


 それは先ほど貧民街での食糧配給を警護していた地球守備軍の指揮官だった。壮年とみられる容貌に、右目を中心に広がった大きな火傷の痕、迷彩柄の野戦服の上に漆黒の軍用コートを纏い、傍らには同じ野戦服に袖を通した18歳ほどの美しい顔立ちの少女が付き従っている。


「質問、怪我はないか?」


 壮年の男性の傍らに控えていた少女が優し気な微笑みでシンシアに問いかける。困惑しながらもそれに頷いたシンシアの頭を優しくなでた少女は右手をまっすぐに上空に挙げた。


 次の瞬間、校庭に50機以上の鎧武者、鐡聖将が飛翔しながら現れ着地する。


 3メートルを易々と超える巨躯、深緑色の装甲に遠近様々な武装が施され、右肩には地球連邦政府の国旗である地球を鷲の羽で囲んだエンブレムに地球守備軍を示すEDFの3文字。


 ストライクランサーⅢ、地球連邦政府、地球守備軍の正式採用する鐡聖将が星雲特警たちと相対するようにその武装を向ける。


「何の真似だ、地球守備軍」


 隊長の剣呑そうな声に構う事無く、壮年の男はタロウに2冊の手帳を手渡した。


「忘れもんだ、坊主」


 そうして手渡された2冊の手帳は、守備軍を見つけた時に慌てて遠ざかったせいで紛失していた自分たちの偽造市民証。


「矢城将軍、だな?地球の英雄がこんなことをしてただで済むと?」

「そっくりそのまま返すぜ星雲特警、2人の地球連邦国民にこんな真似をしておいてタダで済むと?独立国家たる俺たちの祖国への主権侵害、軍が行動を起こすには十分すぎる理由だ」

「地球市民?馬鹿な!その少女も少年も、この星の生まれではない」

「さあ?俺には本物の市民証に見えるんだがなあ」


 隊長の怒声に一切構う事無く、矢城はタロウに目を向ける。その瞳は暗に事情は全て知っていると物語っていた。


「正義を敵に回すのは迷いがあるか、坊主」


 その言葉に息を詰まらせる。その表情で全てを察したのだろう。壮年の男性、矢城は苦笑の表情を形作る。


「あんまり小難しく考えるな、正義なんてものは人間が社会や集団という、属するコミュニティを効率よく運用するために生み出した集団秩序に過ぎん。それ自体に崇高なものがあるわけじゃない」

「な、そんなことは!?」


 その矢城の言葉にタロウが反論しようとする他ならぬ正義のために戦い、命を落とした数多の仲間を知るが故に


「注意喚起、話は最後まで聞け」


 少女、ヒカリが軽く横目で注意し、矢城はその怒りが好ましいとでも言うかのように微笑む。


「正義、それ自体に決して崇高な価値があるわけじゃない。属するコミュニティが完全に統一化されておらず、現実問題においてそれが不可能である以上、価値観の相違はそのまま正義の並列化となる。

 だからこそ正義、それ自体に価値があるのではなく、それぞれが各々の倫理に従い正しくあろうとする人の意志にこそ尊いものがあると俺は信じている。

 だからこそ、銀河を守ろうとするこいつらに対して、その娘を護りたいと思う心は決して劣っているものじゃない。

 なんの罪もない命を護ること、それが例え汚泥の中でただ一粒の白砂を救うようなモノだったとしても、その行為が決して意味をそこなう事は無い」

「そこまでだ、地球守備軍。俺たちの仲間を惑わすのはやめてもらおう」


 隊長の放った光線銃の弾をあろうことかヒカリは素手で受け止める。

 だが、その光線が彼女に傷を負わせた様子はない。しかし隊長はそれに構う事無く、その銃口を油断なく矢城に向け続ける。


「ここは引き受けてやる。まっすぐに走れ、迷うな。お前の想いは決して間違いじゃない」


 静かにうなずいたタロウはシンシアの手を引き、鐡聖将部隊が固める脱出路を尋常ならざる速度で駆ける。


「やるぞヒカリ」

「了解」


 その瞬間、部隊長は背中に冷たい汗が流れるのを感じる。30年以上の長きに渡り地球を守り続けた戦狗の放つ圧力。その尋常ならざるプレッシャーが50人以上の星雲特警に震えを与える。


「光楯、装光」


 静かな、それでいて毅然として堂々としたつぶやき。その言葉と同時にヒカリの体が虚空へと消え、虚空に彼女の声が響く。


『護国の誓約を魂魄に刻みて、其の身と其の心、すでに鋼たるならば、汝、遍く光を守護する御楯たるべし』


 その言葉が響くと同時に、両隣に2つの白い魔法陣が出現する。その魔法陣から伸び出た光が矢城を包みこむ。それが晴れた時、そこにいたのは人類の希望を託された瑠璃色の鎧武者。使い手たる矢城は既に人類叡智の結晶であるそれを纏っている。


 3メートルを易々と超える巨躯、瑠璃色の全身装甲に施された金色の縁取り、漆黒のインナースーツには金色のエネルギーラインが走り小型のブレードが総計48枚収められた鋼鐵の両翼、小型の銃口と不可思議な装置が組み合わさった武装を両腕の前腕部に取り付け、左腰には大小の太刀をそれぞれ一振り、そして頭部装甲におさまるは遍く邪悪を許容せぬとでもいうかのように嚇怒の形相を張り付けた戦狗の面。


「それが地球人類最強、光楯か」

「さあ来いよ、全銀河の守護者。地球人類叡智の結晶たるこの鎧でお相手仕ろう」


 その言葉と同時に、矢城……否、瑠璃色の武者、光楯は全銀河の守護者たちに対して手にした真紅の大太刀を突きつけた。

 


 本作「星雲特警ヘイデリオン」は、今回の更新を以て完結となりました! 拙作を最後まで見届けて頂き、本当にありがとうございます!

 peco先生、中島三郎助先生、MrR先生、シンカー・ワン先生。この度はコラボに応じて頂き誠にありがとうございます。特に、イラストやSSで支援してくださったpeco先生や中島先生には、感謝してもしきれません。本当に、ありがとうございました。


 さて。来週この時間帯には、peco先生及びMrR先生との短編コラボ作「メタルヒートVS紅レヴァイザー」をお送りします。

 MrR先生とのコラボ作である「紅殻のレヴァイザー」と、peco先生の「【撲殺聖女】キュアーズ〜癒しの力で撲殺します〜」とのクロスオーバーとなっています!

 来週も拙作をチラ読みして頂けると幸いです! ではでは、失礼しました!

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