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「大殿様は、姫様に希望を見たいのです」

 朔の胸が悲しみにふさがれ、悔しさが涙となってあふれ出た。


「姉姫様たちは、もうすでに逃れられぬ方々の妻となられているのです。せめて姫様だけでもと、大殿様はおおせになられました」


「私では、何の役にも立たないからでしょう。姫らしくあれば、求められるような姫であれば、後宮に入ったり、柳原一族の誰かと縁付きになったりもできたのに」


「いいえ、姫様」


「私が、もっと雅な姫らしくあれば。私がもっと――」


「姫様!」


 パチンと激しい音がして、朔は言葉を切った。ほほが熱い。


「大殿様は、姫様に希望を見たいのです」


 芙蓉が朔のほほを両手で包み、訴えた。


「希望?」


「はい。都のさまざまな事柄に巻き込まれず、この地で朔姫様らしく過ごして欲しいと。失脚をしたからと言って、追放されたり家財を奪われたりするわけではございません。姫様、どうぞ気をしっかりと。ご自身を責めることはせず、こちらで大殿様方の安泰をお祈りいたしましょう」


 必死な芙蓉の気色に、朔はのろのろと手を持ち上げた。芙蓉のほほに手をそえて、彼女の瞳を覗きこむ。芙蓉はずっとこのことを心配しながら、誰にも気付かれないようにしていた。笑みを浮かべ、いつもどおりに過ごしていた。それに気付いた朔は、感謝と謝罪を織り交ぜた涙に、唇を震わせた。


「ああ、芙蓉。芙蓉」


「姫様。朔姫様」


 二人は互いを強く抱き、身を寄せあって涙をこぼした。

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