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芙蓉もどうやら「変わり者」らしいと、真夏は判じた。

 芙蓉は朔を第一に考え、朔の望むことで自分が叶えられそうなことは、すべて叶えようとしているのでは、と感じることがある。


(盲目的に、姫を宝物のように思っているのではないか)


 母の愛よりもずっと強い、まるで恋仲の相手に尽くしているような、そんな印象を持った。彼女らの傍に仕えてきた者たちはそれが当たり前で、別段に不思議とも思っていないらしい。

姫付きの女房といえば、礼儀作法や姫としての心得などを、しっかりと養育するもの。年の近い者ならば、自らが手本となるよう務める。そういうものだと、真夏は思っている。


(妹の女房もそうだし、他のところもそういうものらしいが)


 芙蓉もどうやら「変わり者」らしいと、真夏は判じた。


 変わり者に変わり者がついているのだから、朔にとっては幸せだろう。彼女の父や兄が、どう思っているのかは知らないが。


 ◇◇◇

 

 真夏は、自分に与えられた部屋で横になり、ぼんやりと月明かりに薄藍に染められた天井を、見るともなしにながめつつ、今日のできごとを思い出していた。


 芙蓉は朔の、湖の沖に行きたいという望みを叶えるため、薄物の着物を縫った。袴の裾も短くし、まるで男の装いのようなものにした。朔はよろこび、地元の漁師の舟で、漁の見学をすることになった。


 小舟に家人の全てが乗るわけにもいかない。舟を操る漁師と、その息子である童子。朔と芙蓉。そして真夏が護衛として乗ることに決まった。


 真夏は背に矢を負い、腰に刀を差して、朔の傍に腰を下ろした。これほど間近に彼女を見るのは、牛車の乗り降りの時くらいだ。その距離が、舟に在る間はずっと保たれる。


 真夏の心臓は早鐘のように鳴り響き、それが朔に聞こえてしまいはしないかと、不安になった。彼女を意識するあまり、真夏は朔から顔をそらしていた。自分の右側から、朔の気配やぬくもりが流れてくる。それが妙な気恥ずかしさとよろこびを、真夏に与えていた。


(こんな気分では、何かがあった時に反応が遅くなる)


 そう自分をいましめても、なかなか気持は静まらない。動揺をさとられてはいけないと、真夏は呼吸の速度を、わざとゆっくりとしたものになるよう心がけた。


「わあ」

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