表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/82

「姫様は、文を一通も開いていないのか」

 穴多守か、隆俊自身か、あるいはその両方か。ともかく、野心があって朔に近付いているのは確かだろう。けれどもう十分にウンザリしていると、隆俊の顔に書いてある。これからの来訪は、毎日ではなくなるだろう。


 隆俊の様子に気付いているのかいないのか。朔は自分の望むままに足を動かし、はじめて下界に降り立った天女のごとく、ものめずらしそうにしている。そんな彼女の様子を見るのが、真夏は楽しかった。


(彼女を妻に)


 その考えが、しっかりと真夏の心臓に根を張り育っている。


 彼女に恋文を送るという手は、有効な手段ではないと知った。こんな田舎にまで送られてくる恋文を、いっこうに読んでいる気配が無い。なので、それとなく警護として別荘に来ている、昔からの家人らしい男に聞いてみた。


「姫様は、文を一通も開いていないのか」


 男は別段、変に思うようなこともなく、あっさりと教えてくれた。


「ああ。おまえ、そのころ仕えていなかったのか。昔は読んでいたんだけどな。まだ姉姫様たちが独身だったころだ」


「どうして、読まなくなったんだ」


 男が声を潜めて口元に手を当てたので、真夏は耳を寄せた。


「一番上の照姫様には、想い合った公達がいたんだ。だけど、結ばれなかった。二番目の陽姫様のときも、文のやり取りをしている相手がいたらしいんだが、後宮に行くことになった」


 それがどうしたのかと、真夏は目顔で問う。珍しいことでも何でもない。


 男は眉間にしわをよせ、機嫌を損ねたらしく声をとがらせた。


「姉姫様たちのお嘆きぶりは痛ましいものだったと、女房たちが話していた。朔姫様は、それを間近でごらんになられておいでだ。並の姫様ではない朔様は、公家の世界だけではなく、武家の社会や庶民のことにも興味をお持ちなんだ。そこで、違う結婚の形というか、流れというか、そういうものをお知りになり、姉姫様たちのようにはなりたくないと思われたんだろう」


 真夏は相づちを打ちながら、無言で続きをうながした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ