3on3
ナギサさんに気にしないで下さい、と伝えると受け取った練習メニュー表と呼ばれたそれに視線を落とした。メニューは沢山あり、一通り読むと藤也と夏那兎の名前を後ろの方に見つけた。1年生同士で試合をやらせるらしい。2人を探すと、丁度アップを始めたばかりのようだ。あ、目が会った。
笛が鳴り、今度は3on3をやるようだ。選手たちが休憩している間、ユーコさんとコーンを運び、コートの中央に並べる。岡田先生が今回はドリブル無しだから、と言っていた。オールコートで2本先取したチームが勝ち、負けたチームが残り続ける、というものだ。
うへ、キツそうな内容ですね。何人かが凄く嫌そうな顔をしている。ナギサさんはお構いなしにどんどんチームを発表している。
紙を見ると※1年生は筋トレ、となっているので藤也も夏那兎も呼ばれない。すごく残念そうな顔をしている。仕方ない。まだ1年生は揃ってないみたいだからね。
チームが出来るのをじっと見ていると、ユーコさんに怒られた。いかんいかん、見ていることがマネージャーの仕事ではない。コーンの次は審判とチームの勝ち負け、シュート率等の集計をするらしい。どっちをやりたいか、と聞かれたので素直に審判したいです、と伝えた。集計はちょっと自信ないかな。
ナギサさんがゼッケンを配り終えると、直ぐに3on3が始まった。ジャンプボールからなので、ナギサさんからボールを渡してもらう。
バシッ!!
2つの手が垂直に上がったボールを叩く。
先にボールをキャッチしたのは赤チームで、もう1人の味方がリングへ走り出す。
ボールは大きく放られて1バウンド後しっかりキャッチされる。
ジャンプボールをしていた人は敵のディフェンスを振り切ってしっかり走れている。
ボールが優しく投げられ、フリーでキャッチする。
そのままジャンプショットをし、1本決まる。
スパッ!!
綺麗な速攻の形だ。
相手の黄色チームも直ぐにやり返す。
しかし、既に赤チームにマークをされている。
黄色チームはスクリーンでフリーの人をつくりだす。
パスを出した瞬間に、ボールを持っていない2人が走り出す。
さっきの赤チームと似ている。
しかし、途中でボールは止まってしまう。
シュートするにはディフェンスのマークが邪魔だ。
すると、またスクリーンを使ってフリーの人をつくりだす。
パスは通り、そこに目掛けてパスを出した人が走り込む。
ボールを持っている人が手渡しの構えをして、スレスレでボールが受け渡される。
そのままレイアップでシュートが決まる。
ザシュ!!
これもとても綺麗だ。
顔が自然とにやけてしまう。
「楽しそうだね」
一瞬振り返ると夏那兎がからかうような目で見てくる。それはそうだ。あんなプレーを見たら心踊るってもんだ。直ぐに目をコートに戻す。
「夏那兎。ちゃんとやって」
「わかってるよ。厳しいなあ」
「……ちゃんと、ね?」
ナギサさんの声が少し離れたところから聞こえる。
「す、すみません!」
夏那兎の焦った声がするけど、今はそれどころではない。攻守交代した赤チームが間違えてドリブルをしてしまう。
「フータ!馬鹿野郎!」
岡田先生の怒鳴り声がして、フータと呼ばれた人が顔を顰める。
「すんません!」
再びボールは黄色チームのものとなり、今度はポストプレーでシュートが決まる。
ザシュ!!
黄色チームが2点先取し、赤チームの残留が決定した。コートの外からあーあ、フータ馬鹿だな、という声がする。ほんと、がっかりだよ!
数分後、数体の屍が転がっていた。中にはさっきのフータと呼ばれていた人も含まれている。連続で負けてしまい、体力がすかんぴんになったせいだ。それ以外の人はぴんぴんしている。
夏那兎を見ると、よしよし真面目に筋トレをやっているな。そう言えば、朝はかなり緊張していたっけ。それが無くなっていたのを夏那兎は気付いたのか。