令嬢の告白
墓所の一角に、日傘を差した老婦が立ち止まった。
「久し振りね」
老婦は左手の花水木を、そっと供える
「貴女が私の教育係から離れて、もうどの位になるかしらね」
老婦は墓の前にしゃがみ込み、微笑む
「貴女の指導はいつも厳しくて、箱入り娘の私は貴女に不満ばかり零してて。貴女を見返そうと必死で。ようやく見返せると思ったら。貴女は此処に来てしまった」
哀しい視線を向けると、老婦は鞄の中から紙コップと魔法瓶を取り出す。瓶の中の紅茶をコップに注ぎ、花水木の隣に置く
「授業の終わりに、貴女の淹れる紅茶が楽しみだったわ。また、貴女の紅茶を飲みたいのに、誰も再現出来ないのよ」
もうすぐ私もそっちに行けると思うから、その時は楽しみにしてるわね。老婦は墓に再び微笑むと、その場を立ち去った