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静寂の森

チュンチュン。

おはよう。

今何時?九時四十五分!

和樹、あいつ遅い!!ぜってぇ寝坊だ。


ピロロロロロロ


小型連絡機が鳴る。

和樹からだ。


「ごめん!!あと十五分で行きマッスル!」

ブチッ


通信が切れ、俺もキレた。




和樹と合流して向かったのは、町を出て西に向かってかなりの時間歩いたところにある『静寂の森』。


「ここ危なくね?!最近鬼が確認されて、ハントブックにも載ったらしいじゃん!」

「だから来たんだよ」

「まじかよ!」

「これから鬼士目指して訓練するんだ、武神鬼がどのくらいのもんか見ておきたくてな」

「おお!いいな!」


とにかく早く武鬼を手に入れて鬼士になり、強くなりたい。

そのために倒すべき敵を自分の目で一度見ておこうと思ったのだ。



「よし、行くか」



そして、森に入る前はまだ、中で起こっている"異変"に気付くことはできなかった…



森の中を歩き始めて数分。


「やけに静かだな…」

「そりゃー、あれでしょ、静寂の森って名前がついてるくらいだから!」

「…そうだな」

「それにしてもここら辺の木すげーな、削られてたり根元まで割れてたり。それになんだか焦げ臭い」

「鬼が暴れた跡で、焦げ臭いのは鬼の能力に関係しているのかもな」

「怖いこと言うなよ!」

「そう考えるのが一番現実的だろ」

「そうだけどさぁ〜」


この森には2年前に一度、叔父さんと来たことがあるが、その時と何かが違う気がした。


そんな不気味な雰囲気に気圧されたのか、和樹も段々口数が減っていった。


「翠…俺まじで怖くなってきた」

「珍しいな、和樹がそんな弱気なこと言うなんて」

「だって!なんかおかしいだろ?!」

「静かにしろ、近くに鬼がいるかもしれない」

「…っ!わりぃ」

「…ここまで来たんだ、もう少し進もう」

「はぁ。わかったよ」


なんだ?この違和感は……

自分たちの足音と風が草木を揺らす音だけが耳に届く。


そういえば…森に入ってから生き物の姿を見てない…

鬼が現れたことでここら一帯の生物は何処かへ逃げたのか…?

だとしてもこんなにも姿が見られなくなるものか?


ーーーガウァァ…ーーー


「和樹…!止まれ…!」

「なに…?」

「あそこ見てみろよ」


恐る恐る翠の指差す方を見る和樹


「あれって…!!」


四足歩行で、がっちりとした筋肉質の足

遠目からでもわかる綺麗な黒色の毛並み

頭部には太く鋭い角

ユニコーンだ…。


「武神鬼…ユニコーン…Aランク危険種」

「やばいって!見つからないうちに逃げるぞ!」

「…ああ」


来た道を引き返そうと鬼に背を向け、歩き始めた瞬間


ーーーガウァアアアア!!!!ーーー


「気づかれた?!?!」


振り向くと、鬼はこちらを見ながら咆哮し終えた後だった。


「うそ!まじ?!どーすんだよ翠!!!」

「どうするもこうも全力で逃げるしかないだろ!!今の俺達じゃ戦っても勝ち目はない!」


走る走る走る走る走る走る走る走る走る走る

とにかく走る


「うわああああああ!!!」

「くっ…!」


体力には余裕がある、しかし追ってくる鬼…ユニコーンの方が圧倒的に速い…!

森の出口まではまだ遠い、このままじゃやばいな…


「体力には俺の方が自信ある!俺があいつを引きつけておくから和樹は先に森を出て警備隊を呼んでこい!!」

「無理だろ!あれを一人で引き付けるなんて!!」

「このまま二人で逃げてても意味がないから行ってるんだ!!!」

「だったら俺が…!!」

「だから!俺の方が体力あるし足も早い!二人で無事に戻るにはそれが一番いい方法なんだ!!」

「…わかった」

「よし!俺がここらで鬼をギリギリまで引き付ける!その間にできるだけ遠くへ…町の方へ行け!」


返事は聞かず俺は足を止め、追ってくるユニコーンに体の正面を向ける。


明らかに敵意を持って駆けてくる"武神鬼"。


俺は自分の足が震えていることに今気づいた。

初めて間近で見る激情した武神鬼に、俺の心は恐怖で満たされそうに"なっていた"。

崖っぷちで踏ん張れたのは、また和樹や歌織に会いたいという思い、そして皮肉にもあの憎き『頬に傷のある鬼士』の存在が居たからだった。

…まだ終われない!!

ユニコーンまでの距離三十メートル


「来いよ!」


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