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婚約破棄を告げられてから3日が経った。


リアロナは何故、という疑問と悲しみで頭の中はぐるぐると渦巻いていた。

夜会から帰った日、ベッドに入ってから涙が溢れ、一晩泣き明かした。

次の日起きてから体が怠い。

何に対してもやる気が起きない。


これが失恋というやつか、と気付いたと同時に自分がいつの間にシグルドに恋をしていたことを知ったのだ。

部屋に籠っている娘に、リアロナの母は買い物を押し付けた。

娘に何かあったことは一目瞭然だったが、どうしたのかと聞いても目を泳がせて何でもないという。

シグルドと何かあったのだろうと検討をつけたが、とにかく部屋に籠りきりは良くないと考えた。

なので無理矢理外出の機会を与えた。


母に言われた買い物をするため、リアロナは街に出た。

外の空気を吸って街の賑やかさを見れば、少しだけ気分転換が出来たようだった。

体の怠さが少し抜けている。

その時、リアロナは見知った顔を見つけた。

あ、と小さく漏らした声とともに気付かぬ内に体が動いていた。


「フェリル様!」


すぐ目の前の彼女の名を呼べば、彼女は驚いて此方を振り向いた。

リアロナだと認識すると顔を顰められ、その表情にリアロナはとても悲しくなったが、それよりも今はどうしても聞きたいことがあった。


「フェリル様、あの、少しお時間を頂けないでしょうか?」

「何故?」

「その、シグルド様のことで……」


眉間に皺を寄せたままのフェリルにリアロナは気まずそうに言う。

暫し睨まれていたが、フェリルの返事を黙って待つリアロナに小さく溜め息を吐いたあと、了承の言葉を貰えた。


「それで?私に何の用ですの?」


二人は近くのカフェへと移動し、紅茶を目の前に漸く言葉を交わし始めた。


「あの、シグルド様に婚約破棄を申し出されてしまったのですが……」

「ふーん、それで?」


優雅に紅茶を飲むフェリルを見ながら、リアロナは恐る恐る質問をした。


「シグルド様は恋人がいらっしゃるのでしょうか?」


カチャン、と少し乱暴にティーカップをテーブルに戻すと不機嫌な表情のフェリルの眉間の皺が濃くなった。


「シグルド兄様は貴方と違って誠実ですわ!馬鹿にしないで」


心外だ、と怒鳴られリアロナは首を竦めた。


「あの、私と違ってとはどういう?」

「貴方、シグルド兄様という婚約者がいながらノウル兄様に色目を使ったでしょう?最低だと思わないんですの?」


その言葉にリアロナは零れんばかりに瞳を大きく見開いて「色目なんて使ってません!」と反論した。


「よく言いますわ。あれだけ熱い視線をノウル兄様に送っといて、シグルド兄様もノウル兄様も気付いてますわよ」

「なっ!?全然違います!確かにノウル様は天使のようですけれど、それは恋とかではないです!私が好きなのはシグルド様です!」


悲鳴のように眉をハの字にして訴えれば、フェリルはパチパチと瞬きをさせたあと、元の険しい表情に戻る。


「本当に?」

「本当です!ノウル様もフェリル様もとても美しくて天使のようなのでついつい見惚れてしまうのですが、私が好きなのはシグルド様だけです!ですが……」


婚約を破棄されてしまいました、と気付けば涙が溢れていた。

溢れる涙を抑えきれず、うぅっと泣いてしまうと慌てたのはフェリルだった。


「本当の本当にノウル兄様じゃなくてシグルド兄様が好きなんですの!?」


ひっく、と嗚咽まで出てくる始末でリアロナはこくこくと首を縦に振る。

「ああ、もう!」とフェリルは椅子をリアロナの方に寄せると横からリアロナの背を撫でた。


「こんなところで泣くなんて」


全く、と言うフェリルにごめんなさいと謝れば、いいわよとケロリと許しの言葉を出した。

驚いてフェリルの方を向くと、これまた驚いたフェリルの顔が映った。

そうしてふわり、と微笑んだ。


「私、貴方のことを誤解していたみたいですわ」

「誤解?」

「ノウル兄様のことを見てたから、貴方はノウル兄様を好きなのだとばかり思って、シグルド兄様を可哀想だと思っていたんですの。だからシグルド兄様を悲しませる貴方を嫌いになったのだけれど、ただの勘違いだったわけね」


はあ、と脱力するフェリル。

いつの間にかリアロナの涙は止まっていた。


「私、昔から綺麗なものが好きでついつい時間を忘れて見入ってしまうことがあるのです。ノウル様とフェリル様はとても美しくて……もちろんシグルド様も素敵ですけど」


癖みたいなものなのです、と溜め息混じりに告白する。


「フェリル様は私のことお嫌いのようでしたのであまり目を合わすことは出来ませんでしたが、ノウル様はよく声を掛けて頂けるものなのでつい」


しょんぼりと肩を竦めれば、フェリルはそうだったんですの、と呟いた。


「ごめんなさい、リアロナ様には今まで嫌な思いをさせてしまいましたわ」


しゅん、とするフェリルにリアロナはぶんぶんと頭を横に振る。


「そんな!フェリル様が謝ることは何も!」

「怒ってないんですの?」

「まさか!寧ろ誤解が解けてよかったです」

「そうね、その誤解はきちんと解くべきところで解かないと」


にっこりと天使のような笑顔で、シグルド兄様のところへ行きましょう、とフェリルは言った。





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