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それから何度かヨーゼント公爵の屋敷に伺うことになった。以前見せてもらった小さな噴水の場所や他の庭を回ったり、一緒にお茶をしたりと、シグルドとの仲を深めていった。
たまに弟のノウルがその会話に混じると途端に会話が弾む。
シグルドはあまり積極的に話す性格ではないらしく、そんな彼に対して積極的に話し掛ける勇気を持ち合わせていないリアロナは自然と会話が続かない。
だがそこに苦痛さはなく、のんびりと過ごす時間を共有しているのだ、と思っていた。
だからたまにノウルがそこに加わると、いつもとは違った時間を楽しめていたし、彼は最初に思ったように天使のような顔でどうしてもそんな彼を見てしまっていた。
20歳となるリアロナよりも5つ上のシグルドと、リアロナと同じ歳のノウル。
同じ歳の彼に天使、と言うには男性に対して可愛いらしすぎる表現だろうと口にしたことはなかったが、心の中ではいつも、今日も天使ね、と思わずにはいられなかった。
*
初対面となる目の前の少女とは、今しがた曲がった角でばったりと出くわした。
「貴方がシグルド兄様の……?」
ぶつかりそうになった私達は、後ろへ一歩お互いに後退った。
シグルド兄様、という少女はどう見てもお嬢様な風貌をしていて、ふわふわのブロンドの髪に、青い宝石のような瞳をしたその少女はまるでお人形さんのように可愛らしかった。
漆黒の髪色を持つ、少し深みのある青の瞳のシグルドより、同じブロンドの髪に青の瞳のノウルがすぐに連想された。
成る程、兄妹だ。
「シグルド様の婚約者の、リアロナ・アフューレです。フェリル様ですね?お会い出来て光栄です」
礼をしながら挨拶をする。
公爵令嬢という彼女は自分よりも立場が上だ。
「ふーん、そう」
一瞥し、さらりと横を通りすぎていった彼女に唖然とした。確かに彼女はリアロナよりも立場が上だけれども、彼の兄の婚約者であり、一つ年上のリアロナに対してあまりにも粗末な態度だったからだ。
彼女の性格上か、それともリアロナが気に入らないのか。
可愛らしいお人形さんに受け入れられていないのだと思うととても悲しかった。
「リアロナ嬢?どうかしたのか?」
フェリルが去っていった方を見つめていると、前方から声を掛けられた。
「シグルド様」
いつもの無表情になんでもございません、と足を踏み出そうとした時。
「あ、」
上手く足を前に出せず、絨毯に足を躓いてしまった。
そのまま前に倒れるかと思った体はがしり、と目の前にいたシグルドに両肩を掴まれて予想を反して体は元の位置に戻された。
「大丈夫か?」
「え、ええ。ありがとうございます」
ドキドキと胸の鼓動が速まった。
それを落ち着かせるように、片手を胸の前で握りしめる。
両肩を掴まれた時の手の大きさや、その力強さに自分とシグルドの男女の違いを見せつけられた気がして、中々心臓は落ち着いてはくれなかった。