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即興小説

出会い

作者: 瀬古冬樹

 暖かな日だった。日差しは強くなく、薄い雲に覆われた空だったけれど、それでも暖かな日だった。ゴールデンウイークを間近に控えた春の週末。

 そんな天気だったし天気予報も曇りだったから、私は軽装で出かけた。長そでティーシャツにジーパン、肩から斜めにかけた小さめのバッグには携帯と財布と文庫本が一冊。

 全国チェーンのコーヒーショップで、飲み物片手に本のページをめくるのが、休日の楽しみ。


 いつものコーヒーショップでラテを頼んで、窓際の一人席の隅に陣取る。外からの明かりは店内の灯りより明るくて、本を読むのにちょうどよい位だった。

 ゆっくり飲みながらもいつの間にかラテがなくなっていた。時計を見れば、一時間以上が経っていた。トイレついでにもう一杯頼もうかなと席を立つ。


 カウンターで何を頼もうか悩んでいたからか、少し時間がかかってしまったらしい。席に戻って再び本を開いた時、小さく違和感を感じた。

 顔を上げて外を見れば、曇りのはずなのにどこか違う風景。先ほどよりも暗くなった曇り空。

 道行く人の姿を見れば、傘を差している人がいた。手をおでこに当てて庇のようにしている人も。まるで雨が降っているかのようだ。

 道路を見れば、濡れて色を濃く変えたアスファルト。


 よくよく目をこらしていると、隣の人から声がかかる。いつの間に、隣に人が座ったのだろうか。

「霧雨ですよ」

 柔らかな笑みを浮かべたその人のスーツは、少し水分を含んだように肩の辺りの色が濃くなっていた。


 春の霧雨が運んできた、小さな出会い。

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