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俺は一人が嫌いですよ。  作者: はんぺん
2/7

追憶ですよ

少年の名前は能見のうみ かなで

父は穏やかでおとなしい性格だったが、人類を絶やさせはしないという信念を持った人だった。

母はやさしくも強い人であり、その大きな愛を絶え間なく注いでくれた。

少年たち家族は強固な防衛機能を持つ魔道都市に住み、魔道の研究機関に在籍する両親は人類の生き残りを掛けて日夜研究を重ねていたが、世界各地に点在していた防衛都市は初期に3000箇所あった数を加速度的に減らしていった。

少年が6歳になるころ、人間の都市は両手で数えれるほどしか残っていなかった。


~~~~~~~~~~~


ズズウウゥゥン!!


「まさか強化障壁が突破されるなんて!!アビノウンは新しい魔術を開発しているのか!?」

「あなた!奏をウルスラのところへ!」


父に抱きかかえられ長い通路を走る。

背後や天井からは絶え間なく衝撃音と振動が響き渡り、幼い子供を恐怖させるには十分な状況だった。


「お父さんお母さん!どこに行くの?!怖いよ!!」

「大丈夫よ奏、あなたはお父さんとお母さんが絶対に守るわ。」


母の笑顔に少し安心するが爆発音は鳴り止まない。

通路を走りきり、大きな扉の前に立つ両親はひどく悲しげな目をしていた。


「管理者、能見明のうみ あきらおよび能見芽衣のうみ めいだ。緊急事態におけるD45指令発動。ウルスラを起こせ。」

『管理者アクティベート。防壁開きます。』


重い機械音が響き扉が開く。

灰色の通路とは違い、真っ白な空間にそれはあった。

起立した状態で支えられ、光を反射して白い部屋の中でも輪郭がはっきり見える純白銀の機体。

異世界から送られたパンドラの箱の中身。最後の希望。

人型自立思考殲滅兵器タンビオン。

その0番機ウルスラ。


「ウルスラ、起動しているか?君が言っていた搭乗者を連れてきた。」

『管理者を認識、起動式省略。搭乗者の認識を要求します。』

「この子を搭乗者として登録してくれ。」

父が腕に抱きかかえる少年を地面に立たせる。


『了承・・アラート。センサーに反応多数アビノウンの魔道兵器が接近。退避勧告します。』

「あなた・・・」

「ああ。叶うなら僕たちでこの子が無事に過ごせる世界を作りたかったな。さあ!行きなさい奏!」


少年は背中を押され白銀の機体へと2、3歩ほどの所でよろめきながら倒れこむ。


そのとき天井が崩落し、四体の黒い円盤に仮面を押し付けたようなアビノウンが浮遊しながら少年たちを睥睨する。

各所に落ちた天井の破片が備え付けてあった機械を押しつぶし、爆発とともに火を噴く。


【消去対象三体確認、消去実行】


こもった低い機械音が響くが少年は両親の元に走った。


「お父さん!!お母さん!!!」

二人は落ちてきた天井に下半身を潰されていた。

「か、かなで!しっかりしなさい!お父さんとお母さんは大丈夫だ!」

「そんな、お父さん!うそだよ!!」

「かなで、私たちは大丈夫よ!あなたは先にあの白い機体の所へ行ってなさい!」


地面に広がる血を見て、少年は涙をあふれさせる。


「おまえは父さんと母さん自慢の優しい子だ。この先辛い事があるかもしれんが父さんと母さんはいつもそばにいるからな。」

「かなで。いい子ね。」

父は笑顔を向け、母は頭をなでてくれるが、涙は止まらずたつこともできない。

「いやだあああ!!父さん!母さん!!一緒に逃げよう!!」


両親の上に黒い影が差す。


【術式詠唱省略、魔素還元】


仮面の口が開き、可視光線が三人に向かって放たれる。


『術利防壁展開』


不可視の障壁が奏だけをを包み込み、その後円盤から放たれた光線が三人を通過する。

光線の照射が終わると、冷たくなり始めていた両親の体が末端から光の粒子に変わっていく。


「かなで、時間がない。よく聞きなさい。お前は人類にとっての希望だ。ウルスラとともに未来を作りなさい。そしたら父さんと母さんにはまた会える。」

「あなたは自分がどういう存在なのか知るときが来るわ。そのとき怖がらないで受け入れなさい。あなたは私たちの自慢の息子なんだから。」

「何を言ってるの?わからないよ・・・父さん、かあさぁん。」


涙が止まらず円盤が光線を撃ってくるが構うことなく両親に抱きつきながらすすり泣く。


「愛しているぞ、奏。」

「愛してるわ、奏。また会いましょうね。」


その言葉を最後に両親の体は光の粒子となり空気に溶けていった。


「・・・いやだ・・・いやだいやだいやだあ!!」


泣きながら空気に手を伸ばす。


【障壁で魔術が効力を発揮しない固体が一命】


仮面から発せられる空気の震えが奏に伝わる。


「・・・・・・ぇらが。おまえらが!!おまえおまえおまえおまえ!!!!おまえらが父さんと母さんを!!殺した!!!!!!」


感情の爆発に伴うウルスラの初期起動が始まる。

五本のアクチュエータが伸び、奏の手足を掴み、搭乗者として機内へと取り込む。爆発的な暴風とともに奏を乗せたウルスラは四機のアビノウンを衝撃波でバラバラに引き裂き、地上へと壊れた天井を突き破って飛び出る。


都市は壊滅していた。


魔道障壁は粉々に砕け散り光の粉が都市全体に降っていた。対アビノウン兵器は壊滅させられ、空から6機の大戦艦型アビノウンが中型と小型のアビノウンを順次発進させていた。


「お前ぇ!!お前らがあああ!!!!」


中空に浮かぶ戦艦を血走った目で睨みつける奏。

その感情に呼応して白銀の機体に術式文字が浮かび上がり、亜空間を侵食。一瞬のうちに6機の自立型飛行兵器が召喚される。


「みんな殺してやる!!!!!」

『了承。殲滅を開始します』


そこからは圧倒的の一言であった。

たった6つしかない飛行兵器ウルクはそれぞれが連携しあい、魔素収束砲とブレードを発生させて亜音速で飛行し、敵機を排除して行った。

中型や戦艦型の巨大なアビノウンは6個の自立兵器が輪になって魔素を循環させた強化魔素収束砲によって轟沈させられ、その後は中型機小型機関係なく、ひとつの撃ちもらしもなく自立兵器によって殲滅し尽くされた。


「ひっく、ぐすん、うぇえんん、とおさん、かあさん、なんで、なんで」


各所から火が吹き上がり、熱量を増す都市の上空で機体は搭乗者の感情を表すように膝を抱えて泣く。

全殲滅するまでの時間は早すぎて、父と母が死んだと幼い子供に認識させるには足りなかった。


『殲滅終了。巡航状態に移行。搭乗者、能見奏。タンビオンが0番機ウルスラはあなたに従います。』


女性的な響きを持ったその声が、泣き続ける奏の耳に入るには少し時間がかかった。



「君は誰なの?」

『私は人型の殲滅兵器タンビオンとしてダイダロスに作られた固有名ウルスラと言います。試作機0番として作られましたがダイダロスが崩壊するとともに異空間に廃棄されました。』

「すてられたの?」

『はい。ダイダロスはアビノウンを作り出しました。そのアビノウンが突如として暴走を始め、ダイダロスは人類と共に滅せられたのです。私は製造されたあと、同型機と共に格納庫に収められていましたが、管理者の死亡と共に異空間転送されました。そこからは長い間異空間を漂っていました。漂い始めてから20年ほど経った時、私達のいる空間に接続するゲートがあり、この世界へ導かれました。』

「誰かに連れてこられたの?」

『はい。ゲートを開けたのはレイティスと言う研究者でした。レイティスは異世界へ渡る方法を研究していたようですがその過程で我々タンビオンが召喚されました。』

「他の仲間はどうしたの?」

『わかりません。アビノウンがこの地球に侵略を始める少し前から相互リンクが切れており、どこに存在するのか分からないのです。破壊された可能性が高いと演算していますが。』

「うーん、言葉が難しくて分からないよ。」

『申し訳ありません。学習します。』

「・・・アビノウンはどこからきてるの?」

『ゲートと呼ばれる転送装置で私たちのいた世界から発進されています。私たちがレイティスに召喚された時、アビノウンの発信したビーコンがこの世界を捉え、この世界に無数のゲートが転送され始めたようです。』

「何故アビノウンは人を殺すの。」

『わかりません。詳しい情報は公開されていませんが、ログによれば私たちのいた世界では人とアビノウンが共存を果たそうとしていた所でした。しかし突如として暴走が始まったのです。人を魔素に還元する術式を無差別に放ち始め、人は残らず魔素へと還元されました。この世界でも同様に人類は魔素へと還元され消去されているようです。』

「あいつらは父さんと母さんを消した。」

『管理者能見博士は私の“友達”でもありました。新しい人間の知識を教えてくれました。私のコアは怒りという感情を認識しています。』

「僕はあいつらを許せない」

『搭乗者能見奏。あなたにウルスラは従います。アビノウンに血と痛みの殲滅を持って復讐を。』

「ふくしゅうを。」


原初の翼が起動式を省略して空を突き抜け、光輪が伸びる。

この日から、奏はアビノウンを破壊し続ける。

望みは薄いとわかっていても、人類の生き残りを必死で探しながら。

もともと一話と連結してましたが主人公の復讐心の原点は一話全部使ってで濃く描きたかったので、分けました!

次からは3日に一話掲載できるかなー?ぐらいのノリで書きます!

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