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俺は一人が嫌いですよ。  作者: はんぺん
1/7

起動しますですよ。

赤い。何もかもが赤く、熱い涙の記憶。

記憶の中の自分は弱く小さい存在だった。

そして両親の向こうにはこっちを見下ろす黒く大きな影。


俺は一人が嫌いですよ


第一話、起動しますですよ

 

ぼやけてあいまいになっていく記憶を手っ取り早く手放すために、薄くもやがかかった思考で目を開く。

目の横にはいつの間にか涙が一筋流れていた。

草原に仰向けに寝転んだ先には分厚くよどんだ雲が写るが、見慣れたものだ。


 世界は大崩壊のその後、二度と太陽を見ることなく晴れることのない雲によって色彩を暗く染めた。


「まーた懐かしい夢を見たもんだ。」


 草原に横たわる少年。深く青い目は夢の涙で少ない光を跳ね返し、白に近い金色の髪は雲によってさえぎられた濁った光を吸い込んでいる。全体的には細い印象だが、体のいたるところに傷跡が残り、皮膚の下の筋肉はしなやかに逞しい。


『睡眠時間は6時間、珍しく長い睡眠時間ですね。おはようございます、奏。』


 声が聞こえるのは少年のすぐそば。人型の巨大な物体からだ。

センサー類や、各部のアクチュエーターが起動を始める微かな機械音とともに聞こえる声は、その図体に似合わず女性的な響きを持っていた。


「おはようウル。ここ最近は飛び回ってばっかりだったから肉体的な疲労かな?」

『それもありますがおそらくここ最近戦闘状態を長時間維持し続けたせいかと推測されます。精神の緊張と魔組織の消耗が大きな原因かと。』

「うーん、つっても進行拠点が後2つってとこまで来たんだ。おちおち寝てられないさね。」


そういって背伸びをしながら目に浮かんだ涙をぬぐう。


『奏にはこのことばを掛けましょう。「徹夜はするな、睡眠不足はいい仕事の敵だ。それに美容にもよくねえ」です。』


妙に芝居がかった人間味のある機会音声が聞こえるが、ただ広く暗い緑の丘に彼と彼女?以外誰もいない空間において感心するものも突っ込むものもいなかった。


「それなんの言葉?」

『太古の昔に存在したアニメーションと呼ばれる鑑賞作品の一文になります。この前改修を行った遺跡でログを取っておきました。』


10秒ほどで完全に起動した彼女は、彼を乗せるために王に頭をたれる騎士のごとくひざまずいている。


「え?!じゃあこの前みたいにマンガのログは残ってたりした?!」


大きく口をあけるように開いた胸部装甲からマニュピレーターが五本ほど伸び、彼女の前に背を向けて立つ彼の腕や足を固定し、自らの装甲に彼を納める。


『前回のマンガとは別の物が2万冊ほどのログが残っていましたが奏?マンガだけでなくショウセツなども読んで古代文字の勉強を推奨します。古代の純文学など人間の思考の奥深さに感動します。』

「ショウセツは眠くなる。マンガにも文字はある。よし!後二つ拠点つぶしたら世界の遺跡を回ろう。マンガ探索だ!」


彼が収まった胸部装甲上に文字のような幾何学模様が走り、明滅を繰り返しながら光の粒子が彼女の体全体の機械装甲を覆っていく。


『ではさっさと片付けて私もショウセツを探しに回りたいですね。亜空間制御起動完了、光派形成。』


背部スラスターが稼動し、3つの光輝く輪が形成される。


「これで終わるといいな。二年前みたいに新たな拠点が!!とかもう勘弁。」

『あれは劇的な展開でした。まさか最後の敵が「ふふふ、これで最後と思うな。俺が何もかもの元凶だと思ったら大間違いさ」なんて言いながら自爆した後新たなゲートが形成されるとは。』

「まあ目標が200倍に増えただけだったからな、後は地道にがんばったし。」

『奏、ですが残念なことにまだ人間は一人も発見されていません。』


光り輝く光輪を背負う機体は、丘の草を風で千切り、上空へと飛翔する。


「いや、まだいるはずなんだ。この世界のどこかに必ず。だってそうじゃないと世界が本当の意味で滅びたことになってしまう。俺が最後の人間とかそんなの寂しいし!俺死んじゃう!」

『私がいるではありませんか!と古代の純文学でも特殊な事例によれば機械と人間との恋が展開されていましたが。』


雲をつきぬけ、機体全身に陽光を浴びる。

全身が白い輝きを増し、各部に新たな文字が浮かび上がる


「そーだなー。ウルが人間だったらなー。」

『そうですね。もしそうなったとしたら責任を取ってもらいましょう。』

「HAHAHA!ウルさんも面白いジョークを勉強したもんだ!」

『・・・今はそれでかまいません。』


新たに浮かび上がった文字は空間を侵食し、2つの新たな機体を“召喚”する。

1対の小さな砲身を生やした三角形の機体は人型の肩の部分に取り付き、その砲門に光を収束させる。


「壊しにいきますか。後2つ。」

『機体各部魔素記号式発動準備完了。魔素充填完了。陽光による活性化完了。ウルクマ両肩部に結合および同期完了。魔道機関正常稼動。出力30%を維持。万端です。』

「人型殲滅兵器タンビオンが0番機ウルスラ、および搭乗者、能見奏。アビノウンに血と痛みの殲滅を持って復讐を。」

『ウルスラ、原初の翼起動します。』


空中に陽光を浴びてとどまっていた機体は、光輪の光が増した後空間を捻じ曲げるほどの爆発的な推進力を生み出し進路上の空気は消し飛んでいく。空気どころか空間にまで干渉し、あまりの衝撃に空間が耐え切れず悲鳴を上げる。


「さあ、殲滅しよう」


両手に操縦桿型接続機を握る少年の目は復讐に泣き、口元には狂気に染め上げられた笑みが浮かんでいた。

荒廃した世界、陽光をさえぎる雲を引き裂いて流れ星が空を走る。


~~~~~~~~~~~~~


人間の築いた世界は破壊された。

ゲートと呼ばれる転送装置から突如として世界にあふれ出した謎の侵略者アビノウンによって、人類は文字通り地上から消されていった。


人類が持ち得なかった魔術と呼ばれる新技術を用いるアビノウンは人類の持つ文明をことごとく破壊し、世界は荒廃した。

人類は決死の抵抗を続け、最後にはアビノウンたちの魔道技術を解明、理解するにまで至った。

魔法とは、原子の核に存在する魔素と呼ばれる物を、魔道機関と呼ばれる身体組織で操作し、集約させ、きっかけを与えることで力を行使することであった。

粉塵爆発が良い例えだろうか。空間に微細な粉塵がばら撒かれ、その粉塵を操作し着火というきっかけによって爆発力として力を行使する。

魔素は鉄や、空気中の窒素や酸素、全ての物質を構成する原子の核に量や質は違えど存在した。

その魔素のみを集め、自分の意図したきっかけを与える装置。これが魔道兵器である。

アビノウンはこの魔道技術を持って、人間を殲滅していった。

そして決定的に人間がアビノウンと差をつけられたのは、魔法を単体で使えるか使えないかだった。

人間は魔法を理解できても、その身体組織故に魔法を行使することができなかったのである。

アビノウンは最小型の個体でさえ、身体の一部に魔道機関と呼ばれる魔素に干渉する為の機関を備えていた為、人類が対抗するには敵が多すぎたのである。

人間が魔素を扱うには身体ではなくその他に魔道機関を持つ兵器が必要になったが、時間が足りなかった。

アビノウンに対抗できうる魔道兵器が完成する前に一部の人類は宇宙へと逃げ、人類は地上から排除されてしまった。


たった一人を除いて。


ーーーーーーーーー

初作品となります、ここまでもし読んでいただけたらそれはもう感謝感激雨あられでございます!

ロボット物大好き、廚2病の塊と呼ばれる私でございますが小説なんていやー、俺無理やわーとか思いながらついつい俺のこの封印されし右腕が!くっ!とまあアホなことをしながら書いております(OvO)

続くといいなと本人が一番思っておりますので頑張りますww

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