7.お付き合い開始です
幕間みたいな内容になっています。
今回は次回作のネタを色々仕込んであります。
――ちゃんと書くつもりですが、遅筆なので・・・はい。頑張ります。
――side 宝香
「ええっ!!あ、在原先生と付き合うことになったぁ!?」
「しーっ!み、御門先生!声おっきいですよぅ!」
あのデートの日から2週間後の職員寮のカフェテリア(が、あるんですよ。ウチの学校の職員寮は。まぁ、普段の食事は各自が部屋で作るんですが)での会話です。ちらちらと女性職員の方々の視線がこちらに送られてきます。
うう、恥ずかしいですが、やっと落ち着いてきましたし、秘密にしておくことでもないので言っちゃいました。
というか、御門先生に校内に彼氏ができたら報告しろ、と言われていたので。ええ。ハンターとしても友人の彼にロックオンをするつもりはないとかなんとか・・・。御門先生・・・あなたはいつハンターになったんですか・・・?
「う~わ~・・・鴻崎先生が・・・“あの”在原先生と・・・」
おや?御門先生は冬芽さん(付き合うからにはってことで名前呼びをしましょうって約束したんですよ。ぽっ///)とは担当学年が違ったように思うのですが・・・?
「御門先生は在原先生と仲が良いんですか?」
「仲が良いっていうか・・・ほら、私、家庭部に顔を出してるでしょ?」
「あぁ~・・・最首先生繋がりですか」
納得です。最首先生と冬芽さんはベッタリですからねぇ。
「そうそう。以前、家庭部の子達に、いっそのこと最首先生のお嫁さんにでもなれば~?ってからかわれて・・・でも、あの生活力皆無な在原先生の面倒を見てるから、結婚は無理!とか・・・最首先生ってそっちの気でもあるのかしら・・・」
「あー・・・最首先生って過保護なんですよねぇ。まぁ、そっちの気はないと思いますよ?・・・なんだったら、応援しますが」
「あー、いい、いい。その一言で一気に冷めちゃったし、別に好きってわけでもないしさ~。・・・それに、知ってるでしょ?その最首先生、最近色々と噂がたってるじゃない」
そうなのです。私が冬芽さんとデートをした翌日、最首先生がらみの噂が学校中で囁かれていました。
なんでも、私達のデートと同じ日にヘルシー女学園の日本文化部と料亭でマナー講座を開いたようなのですが、そこで日本文化部の顧問としていらしていた、ヘルシー女学園の体育担当の宗島先生といい感じになったらしいんです。
冬芽さんから聞くに、向こうからなんだか熱心な感じでアピールされているようで・・・スゴイらしいんです。
っていうか、まぁ、最首先生が好きってわけではないのなら、御門先生に想いを寄せているあの先生も救われますね。存在自体が真逆ですし。
あれ?・・・うーん、あの先生の名前、たまに忘れるんですよねぇ。今も、思い出せないんですが・・・こ、怖いですね。実際に存在するのかも怪しくなってきました。これじゃ、御門先生になかなか気付いて貰えないわけです。
「最首先生も大変そうですねぇ・・・昔からモテてましたけど、積極的にロックオンされたのは初めてなのでは?」
「あ、かもしれなーい。・・・なにせ、あちらはこっちとは違ってやんごとなきお家出身の“姫”でしょ?パンピーの生活が珍しいからって、ストーカーまがいなことしてるみたいだし」
「・・・それだけ好きってことでしょうか?」
ストーカーは怖いですけどね。ええ。冬芽さんが顔を青褪めさせながら“スゴイんだよ”って言った理由がなんとなくわかりました。
そういう意味では私と冬芽さんって至って普通の恋愛をしていると思います。いや、周りが特殊すぎるだけで、私達も特殊なのかもしれませんが。
「鴻崎先生も大変じゃないの?だって、あのキレると怖いけど良妻賢母(爆)な最首先生がつきっきりになって世話しないと生きることもままならない在原先生と付き合うなんて・・・」
「ん~、御門先生の中での在原先生のイメージは何となくわかりましたけど・・・そんなに大変って思ったことは無いですよ?寮生活ですからお互いの部屋には行き来しないっていうのもあると思いますけど」
「あー、そうよねぇ。最首先生が在原先生の身の回りの世話をしてるっていうのは知ってるのよね?」
「ええ、在原先生の自己申告で。・・・でも、気になりませんよ?そういうの。家事全般は私も姉に仕込まれてるので、一通りはできますし・・・私って才能に惚れるタイプなので、性格とか生活力とかは二の次ですね」
「あ、わかるかも。・・・っていうか、琴瀬先生の仕込みって厳しいんじゃない?」
「厳しいっていうか・・・いちいち黒いっていうか・・・」
「・・・・・・まぁ、“あの”暗黒同好会の顧問だしねぇ」
ううっ、琴瀬姉さんのフォローは不可能です。暗黒同好会という時点で、カロリー学院では治外法権なんです。・・・というか、その妹である私はどうなるんでしょう?あの姉あってこの妹あり、なんて言われてそうですね。うふふふふ・・・。
「あれぇ、どうしたんです?2人して遠い目をして」
御門先生と2人でたそがれていると、司書教諭の藤吾音萌先生がやってきました。
「あー!藤吾先生、聞いてよぉ!鴻崎先生が在原先生と付き合い始めたんだって!!」
「えぇ?在原先生と?・・・そりゃまた冒険しましたねぇ、鴻崎先生」
「・・・うー、冬芽さんって皆さんからどれだけ手のかかる子って思われてるんでしょう?」
「「あ~!」」
あら?私何か変なこと言いましたでしょうか?御門先生も藤吾先生も目が爛々としてます。
「うふふん、鴻崎先生ってぇ・・・在原先生のこと、冬芽さんって呼んでるんですねぇ」
ひー(汗)・・・藤吾先生の顔があくどいです!暗黒です!・・・っていうか!!!
「うは!!今、冬芽さんって呼んでましたか!?私!?」
大失態です!絶対にからかいのネタになります。今はまだプライベートな空間なので良いですが、職場ではまずいですね。
「あーあー、いいなぁ・・・“冬芽さん”“宝香さん”なんて呼び合っちゃうんだぁ・・・くそー!私も出会いが欲しい!!」
「・・・いやぁ・・・御門先生は、もう少し周りを見たほうが・・・」
ううん、やっぱり藤吾先生も知ってるんですね。あの先生のこと。皆に知られてるのに、肝心の本人に知られてないとか、どんだけ可哀相なんでしょう・・・。
っていうか、声マネ上手いですね、御門先生。どういう咽喉をしてるんですか。
「ここはやっぱり、既婚者に意見を聞くべきよね!私行ってくる!!」
そう言って駆け出した御門先生を見送り、私は藤吾先生と顔を見合わせる。
「・・・気づいて貰えないって・・・つらいですよね」
「そうですねぇ・・・井橋先生って結構優良物件なんですけどねぇ・・・しかも、御門先生の好みのタイプぴったりなんですよ。まぁ、存在感薄いですけど」
あ、そうでした。あの先生、井橋先生っていうんでしたね。・・・はい、すみません。井橋先生・・・。
「御門先生のタイプ、ですかぁ。・・・井橋先生に誰か喝でも入れてくれませんかねぇ」
「あー、そうですよねぇ。ま、でも、いずれは行動するでしょ。じゃないと男じゃない!」
うん、と頷く藤吾先生は女性ですが男前です。性格じゃなくて、行動が。・・・冬芽さんに見習えとは言いませんが、世の中の男性は藤吾先生の爪の垢を煎じて飲めばいいと思います。
「あはは・・・井橋先生にも頑張って欲しいですねぇ。私もイマイチわかってませんでしたけど、恋するパワーってスゴイですから」
なにせ、この歳まで鉄道一本で来た私が告白まがいなことをしてしまったワケですから。
「お、経験談ですか?いいですねぇ。私も頑張ってみようかな!」
「あら?お相手でも?」
「いえいえ。ただ単に恋をしてみたいんですよ~。やっぱり経験って大事ですから」
ああ、納得です。確か藤吾先生って趣味で小説を書いているって言ってましたし。そのための経験なんでしょう。ええ、よくわかります。
藤吾先生がやたらと情報ツウなのは、そういったネタ探しをしているせいだって聞いたことがありますし。
夢を持つ人は素敵ですよ。そこに向かって努力できる人はスゴイです。ですから、私も応援します。
「頑張ってくださいね~。私もできることがあったら、可能な限りお手伝いしますから」
「はい、ありがとうございます~!」
ニッコリと笑ってカフェテリアを出ていく藤吾先生を見送り、私は時計を確認します。
午前10時。待ち合わせは午前11時。そう、今日は冬芽さんと2度目のデートの日なのですっ!
他で出会いがないと、やっぱり職場恋愛になりがち。
というわけで、職場内でカップルができまくる伏線を張ってみました・・・。