後編
くじ引きの結果も何も関係なく、主催者と一緒の班の俺は、一番最後の組となった。
十分ずつずらしてみんなを入れていき、最後の十分に俺たちの番が来る。つまり、約一時間待たされる計算になる。
「長いな。」
「文句いうな」
そんなこんなで一時間が過ぎる。時刻は、九時半。幽霊やなんやで、時間が少しずつおし、残り三〇分となる。
「そういえばまだ誰も帰って来てないよな」
俺が呟いた。それに頷くように亜美が、
「そうなだよね。…学級委員として少し心配。」
横目でちらりと郁也を見、取っ手に手をかける。
「よし、いくぞ。」
ギィィィィと鈍い音が屋敷内にも、自分たちの耳にも響き渡った。
中は、暗かった。手に持つ懐中電灯であかりをつける。足元には、赤く、金色で刺繍が施されている絨毯が。長いのか、階段まで続き、この屋敷の床にはすべてあるのような錯覚を覚える。階段の二階に上がると二つに分かれ、それぞれの通路へと繋がっていた。一階のホールは広く、かなり奥のほうまで広がっている。
「物音ひとつしないな。」
「…みんな居ないのかな」
郁也と亜美の会話が不気味に響くなか、懐中電灯を持つ俺は、前に進んでいった。
「なぁ郁也。この洋館の伝説ってほかにあるのか?」
「え…あぁ。開かずの扉とか、夜、泣き声が聞こえるとか、火の玉があるとか、血痕の跡があるとか無いとか。まぁ、よく聞く噂だけどな。それが本当だって確証はない。」
「…さっきのって…あれお前らの演出か?」
郁也と亜美は二人揃って主催者であり、学級委員でもある。常にクラスが仲良くなる方法を考えるのもこの二人の仕事だ。この肝試しはその企画の一環だろう。クラス全三十六名。そのうちの半分弱が集まった。良くも悪くもない数字だ。
あの驚いた表情。あれも本当なのか嘘なのか。それさえもわからない。でも確かに嘉威の手にはあれが映っていないように見える。二人の顔を覗き込んだ。
「…知らない。郁也やった?」
「いや。俺もかなり驚いた。建人、あれなんだと思う?」
「幽霊、あっ」
急いで廊下のほうへ光をあてる。いま、人の…
「…・どうした?なんか怖いんだけど。」
「いた。」
「え?」
「…人がいた。」
「…クラスの皆じゃなくて?」
「…あぁ。多分違う。一人だったし、光ってたし、何より、腰以上の髪の長さだ。…女か?」
最後にぼそりとつぶやいた。女の霊、か。
「郁也、ここで死んだヒトいるんだよな。」
「あぁ。」
「それで、この洋館は売り払われてるけど買い手が見つからない。」
「そうなるな。」
「だとしたら…」
少しの間が開く。みんなが自然に息をひそめる。
「何だ?」
あの女のヒトが、ここで死んだヒトなのだろうか。
「ここで死んだのは?誰?女?男?」
「…女だ。いやだな。…さっき言ってたやつ、死んだオジョウサマかもしれねぇ」
郁也の顔は見えないが、眉間に皺を寄せたのがわかる。亜美の肩が上がったのも。あの女の人の姿、確かめたいな。
「あの女のヒト、追っていいか?」
「え、あぁ」
郁也の了解がでた。足早に奥の廊下へと進む。
廊下は長かった。ところどころに部屋の扉があり、シンとしていた。足音が響く。
しばらく進んでいると大きな扉の部屋についた。
「おい、郁也。この部屋、オジョウサマのか?」
暫く間が開いて亜美から返事が返ってきた。
「ちがうわ。大きいけどこの部屋はお父さんの部屋だって…。オジョウサマ、首つり自殺らしい。」
そうか、と返事をして廊下を今度は一階のホールに向かって戻る。なんか嫌な感じがした。
廊下を歩いている間、ほかの生徒に一度も会わなかった。入れ違いに出て行ったのか、それともどこかに隠れているのか。なんにせよ、この屋敷は隅々まで探さなければならない。
「二階に行くのか?」
「当たり前だろ。一階は最後でもいい。」
「最後って、いう?右と左どっちから?」
「右」
そういって、絨毯を引かれた大きな階段を上る。
「わっ」
「どうした」
郁也の指先方向へ、光をあてる。
(絵…?大きいな。)
そこにはきれいな女の人の絵が飾ってあった。きっとここに住んでいたオジョウサマなのだろう、と思うがどことなく不気味だ。
「そんなに驚かなくても」
亜美が近寄る。
「いや、何かと目があったと思ったから。もしかしたら、クラスの奴らかと思って…。でもよく見たらでかいし。」
(絵と、目が合った?不気味なことをいうものだ。)
「でも、気味悪いわ、この絵。きっとここに住んでたお嬢様の絵よ。こんなに大きく描いちゃって…。こんなんだから買い手がいないのよ。」
亜美に起こされ、郁也が立った頃に亜美はそういった。確かにそうだ。こんなものとってしまえばよい。もしかしたら、取れない理由でもあるのか?
「それより先に進もう」
俺が言った。今は絵よりクラスの皆を探し出すこと。そっちのほうが大切なのだろう。
右の通路は絵が飾ってあった。奥に進むにつれ、絵がリアルになっていった。本当の人のような絵、果物、動物。気味が悪いほどリアルに描いている。今にも動き出しそうな絵の中で一つだけ、飛びぬけて生々しい絵があった。人を描いているのだが、かなり不気味だ。
「おいおい、みんなどこだよ。」
「て言うかここがどこなのよ。ここに住んでた人どんな趣味してたの?」
「俺が聞きたい。」
横目でちらりと絵をみる。絵の中の人物―――オジョウサマだが、目があった。
「えっ!!」
「なんだ!」
「いや、絵と目があった。」
「だろ!!」
郁也の声にビビったのか亜美が小さく悲鳴を上げる。
「ね、あの部屋なに?」
その拍子で気が付いたのか、この道の一番奥にある部屋の大きなドアの取っ手らしきものを指さす。
「しらね。」
「あたし、ちょっと行ってみる」
「おい!!」
その取っ手に、亜美が走っていく。数メートル離れたその扉に、駆け足で駆け寄った亜美の足は驚く程に早かった。扉を開けると鈍い音がして、その後大きな音がして閉まった。
「…きゃあああああああああ!!」
亜美の悲鳴だ。静まり返ったこの洋館に大きすぎるほど木霊する。
「亜美!」
郁也が叫んで走り出した。俺も後をついていく。
「どうした!!」
意外にも重い扉を、あける。亜美の力に少し驚きながらもわずかな隙間から、俺は入り込む。そのあとすぐに郁也も入ってきた。
「亜美!!…みんな…!!」
亜美に近寄って、部屋を見渡すと、皆が倒れていた。つまり、俺、郁也、亜美の三人を除いた十二人全ての者が倒れていたのだ。その中にポツリと立つ、髪の長い女のヒト。白いワンピースに身を包んでいて、何か少し輝く。ぼうっと光り、不気味だった。
女の人がこちらを振り向く。髪のおかげで顔が半分程度隠れているが確実にこの洋館の、《オジョウサマ》だった。
『あら、見つかっちゃった。』
少しかすれた声でそう言った。手にはロープを持っている。目が、異様なほど大きく開かれている。女のヒトの下に、笹田京子が転がっていた。首に、絞められた跡がある。よくみるとほかの皆にも、首を絞めたような跡があった。
『あなたたち十時ピッタリに扉を閉めたわ…』
十時…。腕の時計を見てしまったと思う。扉というのは、この部屋のモノだったのだ。オジョウサマはヨロッと立つ。一歩一歩近づいてきた。
『私も見られちゃった。あの子たちも私を見なければ、ねぇ』
女のヒト否オジョウサマは、こっちを見る。足がすくむ。声が出ない。
「い、やぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
亜美がまた叫んだ。耳に響く。
『うふふ。じゃあ、ね』
オジョウサマがにやりと笑った。
初でど下手なホラーでした。前と後で完結です。誤字があったらすいません。
私にホラーは、解らないです。もう少し、どんな風にしたら怖くなるのか、少し考えてみたいです。読んで頂きありがとうございました。