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青少年による健全なる恋愛活動

作者: 紅屋の仁

なぜ別視点になると、こうも長くなるのか謎です。別視点も読んでみたいといって下さった方々に感謝をこめて。

一日の中でどの時間が一番好きかって聞かれたら俺は夕方って答える。

夕焼け色に染まった世界はなんか暖かそうに見えるから。


白い校舎の壁が少しづつ橙色に染まってく。


・・・うん、ポカポカしてそうでいい感じ。


そんなことを考えながら俺はぼんやりと校舎を見てた。



・・・ん?


あれは・・・




カッキーーーンーーー



ボトッ



なんか俺のすぐ側に球が飛んできた。

危ねーな、おい。


「菅原ーーっ!!お前、やる気あんのかっ!!」


あー・・・

そういえば今、部活中だったか。


「ありますー」


ゾウリムシぐらいなら。


「もういいっ!!今日はここまでだっ!!解散っ!!」


おっ!やったね。

いやーついてるな、俺。

やっぱ日頃の行いがいいからだろう、うん。


「おい、菅原!お前、謝りにいったほうが・・「お疲れしたー」  


「ちょ、早っ!!」


秒単位で着替えを終え、足早に俺は部室を後にする。


ごめんよ、モミアゲ(顧問)。

俺、部活も好きだけどさ、それよりも好きなもんができたんだ。




昼間より静かな廊下を走りながら、さっき見えた光景を頭に浮かべる。


目と同じくらい頭もよかったら・・・と親に嘆かれるほどの俺の視力を信じるならば。



あの教室にいたのは―――



自然と早く動き始めた足に後ろから誰かが追いついてきた。


「よう、スガ」


そこにいたのは部活以外では、ほとんど話すことがないヤツ。

えーと・・・名前は・・・



うむ、思いだせん。



「お前なんでそんなにいそいでんの?もしかしてお前も彼女、待たせてんのか?」


声をだすことさえめんどくさくて俺は首をふった。

彼女ではない



―――まだ。



「まぁ、そうだよな。お前モテなさそうだし」


余計なお世話だ。この名無し野郎。


「それじゃ、お前なんでいそいでんの?」


「・・・忘れものしたような・・・」


―――気は全くしない。

というか忘れても俺は気にしない。


そんなことより、もっと重要なことがある。



早く



早く



彼女自慢をし始めた名無し野郎を完全に無視しながら俺は走った。





そしてたどり着いた目的地。

見慣れたドアの前で俺は目を閉じた。


―――必死で来たんだ。まだ、いてくれよ。


祈るような気持ちで教室のドアを開ければ―――




抱き合うカップルがいた。




男の体が邪魔をして抱きしめられている女の子がよく見えん・・・。



おいおい・・・



まさかっ!?



自分にとって最悪極まりない想像が頭を巡る。



あれは・・・



「お前ら、なにやってるんだよっ!?」


俺を乱暴に押しどけ、名無し野郎が叫んだ。


その声に振り向いた2人の顔はどっかで見たことがある。



でも、あの子じゃない。



強ばっていた体が一瞬で緩んだ。


「答えろよっ!ミナっ!」


あー・・・はいはい、ミナちゃんね。

うんうん。そうだよね。

あの子のはずないよねー。

アハハー・・・


目を閉じ、今だに落ち着いてくれない心臓に手を当てて、最悪なイメージを無理矢理、頭から消した。


「ヒデ君っ!?部活中じゃなかったの!?」


あー・・・確か、そんな名前だったなアイツ。

入部した時、サッカー部と間違えてんじゃないかってからかわれてたっけなぁ。

いやー懐かしいねぇ。

教えてくれてありがとう、ミナっち。


「今日は早く終わったんだよ・・・。だから、お前を捜しに来てみればっ!ミナ、コイツ誰なんだよっ!!」


状況から考えても、ただのお友達ですとは言えんよな。ミナっち、顔色悪いし。


「俺?俺はミナの彼氏だよ!お前こそ誰なんだよっ!邪魔するなっ!!」


野生の彼氏2号(仮)が現れた!!


とか言ってみたりして。


ヒデはともかく、俺は間違いなく部外者。邪魔して、ごめんよ彼氏2号(仮)。



はぁぁぁ・・・



やっぱり、もう帰っちゃったのかなー。

恨むぜ、モミアゲ(顧問)


なにやら言い争い始めた3人をよそに、俺は未練がましくあの子を探す。



いや、まぁこの状況でいるわけ・・・



ん?


んん?


んんん?




アレは・・・


まさか


教卓にシッポが生えた!?




わけがない。



だとすると・・・



ニヤリ



どこか確信めいた期待に顔が緩む。

怒鳴りあってるアイツらは、俺の存在を全く意識してない。好都合だ。

怒号飛び交う教室の中へ俺は踏み出した。


近いようで遠いこの微妙な距離を少しでも縮めるために―――


ただの友達やってるのも楽しいけどさ。

もっと近くにいたいと思う俺もいるわけでして。

だからさ、こんな風に一歩づつでいいから近づかせてよ。



ね?




森ちゃん




―――見っけ。



会いたくてたまらなかった子は、教卓の中であらぬ方向を見ながら、考えごとしてるようだ。


じーーっと見つめてみても全く俺に気づかない。


それをいいことに俺は彼女を観察し始めた。



今日はポニーテールかい、森ちゃん。

うん、すごくイイよ。特にうなじがイイ。


色、白いなー。俺とは大違いだ。

そして、柔らかそう。

触りてー・・・。


無防備に開かれた唇は、優しいピンク色。

これは、あれか。

俺を誘ってるのか、森ちゃん?


それなら・・・


と俺の頭が暴走しかけたその瞬間、森ちゃんがこっちを向いた。



やらしいこと考えてるのがバレたかと思って、心臓が飛び出るんじゃないかってくらい驚いたけど。


森ちゃんは少しビックリした後、恥ずかしそうに小声で


「やぁ」


と言った。




あぁ


俺の好きな森ちゃんだ。




「やぁ」


その時の俺の顔はきっとニヤけてたに違いない。


「で、なにやってんの?森ちゃん」


まぁ、だいたい想像できるけどね。


「・・・一人かくれんぼを少々・・・」


「ふーん・・・」


咎めるように森ちゃんを見つめる。

俺に隠し事とかできると思ってんの、森ちゃん?

案の定、彼女は無言の圧力に耐えかねて話し出した。


「・・・友達を待ってたら、なんか出るに出られん状況になりまして・・・」


「・・・そら災難だ」


確かに出づらい状況だよね、これ。

俺は空気とか読まないから、気にしないけど。


「うん。で、すがやんはどうしてここに?」


ここで「君に会いにきたんだぜ☆」とかサラっと言えたら楽なんだけど、俺の限りなくゼロに近い恋愛スキルでは無理。

これが初恋なんです、勘弁してください。


個人的には、森ちゃんと一緒に教卓の中に入りたかったんだけど、それだといろいろマズいので我慢して教卓の隣に座った。


「俺?俺はヒデの付き添いー。なんか、面倒ごとが始まりそうだったから、ほっといて帰ろうかと思ったんだけど・・・これが見えた」


使って悪いな、ヒデ。

今度ジュースおごってやるよ。


「・・・お主、なかなかやるな」


ホント、よくやった俺の両目。


「でしょ。あ、森ちゃんアメ食べる?」


なんでアメかって?

大きいアメ食べる森ちゃんがものすごく可愛いからですけど、何か?


「かたじけない。お礼にチョコレートはどうでござるか?」


森ちゃんがくれるなら、食べるのもったいないな。今日という日の思い出にぜひともとっておきたい。


「ありがたい。遠慮なく頂くでござる」


森ちゃんは、テンポがいい。

小柄な体に低めの声。これといって特徴はないけれど。

俺にとって彼女は特別。


「修羅場ってるね」


お互いを罵倒しあう様子は見ていて気持ちいいもんじゃない。

けど、俺はこんな状況でもヒデがうらやましくてしょうがない。


だって、俺は森ちゃんが他の誰かに抱きしめられていても罵る権利なんかないから。


ただ見てるだけしかできないから。


「恋愛は甘くなさそうだね」


片思いも甘くないよ、森ちゃん。

だからと言って森ちゃんに恋愛したくないとか思われると非常に困るので、俺は普段全く働かない頭を必死で動かす。


「んー・・・。そうでもないと思うよ?お互いが相手に甘さをあげることを忘れなければ、ずっと甘いまんまじゃん。ちょうど、俺が森ちゃんにアメあげて、森ちゃんが俺にチョコレートくれたみたいにさ」


森ちゃんも俺も甘いもの好きだから、その辺は上手くいくと思うんですよとアピールしたところで森ちゃんは気づかない。


「すがやんの理論でいうと、ミナっぺとやらはもっと甘さがほしかったのかな」


森ちゃんの言葉にミナっちを見れば、今にも泣き出しそうな顔しながら二人の男に言い訳してる。

ふむ・・・。


「いや、あの子はアレだよ森ちゃん。カフェオレ派なんだよ」


俺の言葉に森ちゃんはキョトンとした。あ、その顔も可愛いねぇ。


「甘いミルクだけでは満足できなくて、苦いコーヒーもほしくなっちゃったんだよ。森ちゃんからは見えないだろうけど、あいつら全く逆のタイプなんだよ。優等生なユウとちょい悪なヒデ。どっちもほしかったんじゃない?」


そして今も、どっちも失いたくなくて足掻いてる。

客観的に見れば、よくある話ですむけど当事者にしてみればたまったもんじゃないだろう。


「・・・わがままだね」


俺なんか森ちゃん一筋すぎて、自分でもちょっと気持ち悪いと思う今日この頃だというのにね。


そんなことよりさ。

俺ちょっと気になっちゃったんだけど。


「そうだねー。ところでさ、森ちゃんはコーヒー派?ミルク派?」


ここ重要だよ!

コーヒーみたいなシブい男かミルクみたいな優しい男なのか・・・

俺の目指すべき姿が決まる!!


「私はコーヒーもミルクもどっちも単品じゃ飲めなくてね。唯一飲めるのはコーヒー牛乳だけ」


はっ!?

コ・・・コーヒー牛乳!?


「まさかの第3の選択!?うんでも、わかるよ。おいしいよね、コーヒー牛乳。俺も好きー」


そして、それ以上に森ちゃんが大好き。

これといって意味のない会話が楽しくて、森ちゃんがまとうゆるい空気が心地よくて。

ずっと側にいたくなって―――


うん。

俺、頑張ってコーヒー牛乳みたいな男になるよ!どんな男かさっぱりわからんけど!


「そっか、そっかー。森ちゃんはコーヒー牛乳派かー。俺ちょっと安心」


なんとなくコーヒーとかより難易度が低そうな気がする。いや、ホントになんとなくだけど。


「そんで、森ちゃんは甘いほうがいいんだよね?んー・・・それはアレ?5分ごとにチューするとか1分ごとに愛してるとか言われたい感じ?」


よし、この機会にいろいろ聞いちゃおう。


「いやいや。私は自分の身の丈にあった恋がしたいなーって思うだけだよ。子供っぽいけど、私は手つなぐだけで、十分ドキドキするよ」


俺なんか手つないじゃったら心臓止まるかもしれないよ。そんで、俺も身の丈にあった恋がしたい、森ちゃんと。


でも、森ちゃんは俺じゃない人とそんな恋をしたいのかもしれない。


さっき頭をよぎった悪い想像が戻ってくる。

森ちゃんが他の誰かと・・・。



そんなの嫌だ・・・



絶対、嫌だ。



「ふーん。じゃあ」



身をのりだして、森ちゃんの視界を奪う。自分一人が森ちゃんの目に映っていることがたまらなく嬉しい。


森ちゃんはね、俺だけにドキドキすればいいの。


そんな自分勝手なことを考えながら俺は森ちゃんの手をぎゅっと握った。



「・・・ドキドキする?」



余裕をみせたくてニヤリと笑ってみたけれど、顔が熱くてたまらない。森ちゃんの顔が赤いのもきっと夕日のせいだけじゃないよね。


「・・・する」



あー・・・俺、17年間生きてきた中で今が一番、幸せだわ。


うん、決めた。

森ちゃんが誰を好きだろうが俺は森ちゃんを絶対にあきらめない。


俺を本気させた責任とってね、森ちゃん?


「だってヒデ君は部活ばっかでっ・・・私、寂しくてっ!!」


なんだ、アイツらまだいたのか。

ミナっちが悲劇のヒロインみたいに泣き叫んでるけど特にかわいそうだとは思わない。

でも、その言葉に森ちゃんの表情が曇った。

んん?


「・・・大人になったら飲まなくちゃいけないのかなコーヒー」


どこか不安げに言う森ちゃん。

・・・コーヒーぐらいなら俺がかわりにいくらでも飲んであげるけど、なんとなく森ちゃんはそういう答えを望んでなさそうに思えた。

それなら―――


「もしそうだったら、ネバーランドにでも行っちゃう?」

森ちゃんが変わらないことを望むならそれでもいいよ。

そのかわり、ずっとこのぐらい・・・いやもっと近くにいさせて?


「いいね。その時はどうぞご一緒に」


言われなくてもついて行きますとも。



「森ちゃんとならどこまでも」



いけるとこまでさ、俺と一緒に行こうよ。

ね、森ちゃん?





読んで頂きありがとうございました。紅屋の仁でございます。実は最初に思いついたのはこちらの別視点だったりします。なので、やっと書き終えたと感じております。

個人的に教卓の二人がどうなるかより、修羅場中の三人組が気になったので彼らの今後を考えてみました。

①ミナっち、二人にもてあそばれた悲劇のヒロインを演じる。

②ミナっち、二人をもてあそぶ小悪魔になる。

③ミナっち、二人を従える女王様になる。

私は③が一番おもしろそうだと思うんですが、皆さんはどうですかね。

お好きに想像してやって下さいませ。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 今でもとっても大好きな森ちゃんとすがやんです(笑) [気になる点] ものすごく今更なところ。 [一言] 感想に感想返しがついていた事に漸く気付き、三人と二人の続きが読めるなら、ぜひともお願…
2018/02/28 02:14 退会済み
管理
[一言] >コーヒー牛乳みたいな男になるよ!どんな男かさっぱりわからんけど! この一文に大爆笑してしまいましたwww やるな、すがやん。 惚れちゃいそうになりました。 彼は森ちゃん一筋なのにw 別視点…
2012/05/20 21:13 退会済み
管理
[一言] 彼視点up嬉しいです! 彼女視点以上に甘々メロメロですね。 この二人はお話のようにほのぼのとした感じのお付き合いをして欲しいですね。 個人的には修羅場な三人の今後ですが、どのみち周り…
2012/04/17 23:20 退会済み
管理
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